episode20秋side ページ20
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案内されたのは窓から遠い、店内の奥の方の席だった。
さり気なく俺の座る方の椅子を引いた早川。
さっきからずっと思っていたが、たぶんこいつは女たらしだな。
告白も早そうだが、本気度が低そうだからプライドを傷付けるのは難しそうだ。
俺も本気で頑張らねば。
「何頼む? ドリンクもスイーツもいっぱいあるよ」
「うーん……あ、ホットココア!」
「好きなの?」
「はい!」
もう自分が本当に女子のような気がしてきた。
危ない危ない。
奢ってもらえるのなら食べたいものを食べたいだけ頼めばいいや。
「あの、チーズケーキもいいですか……?」
「良いよ良いよ、好きなの食べて」
「ありがとうございます!」
近くを通りかかった店員さんに、俺がココアとチーズケーキを、早川はストレートティーとチョコチップスコーンを注文。
洒落たやつだな、なんて早川の顔を見ていたら、相手もこちらを向いたようで目が合ってしまう。
ぱっと逸らすと、早川は苦笑いして、それからまたいつもの女子うけの良さそうな笑顔を浮かべる。
「あのさ、名前聞いてもいいかな?」
「あ、佐藤ふたばって言います」
人に名前を訊くなら、まず自分が先に名乗るべきではないのだろうか。
まぁ、早川の名前は聞かずとも知っているのだが。
「ふたばちゃんか、可愛い名前だね〜。俺は早川優。優しいって書いてすぐるって読むんだ」
「へぇ、素敵な名前ですね」
「ありがと」
それからは何気ない会話で時が進んだ。
あの場所で何をしていたか、と訊かれた時は少しばかりひやりとしたが、郵便局に手紙を出してきた帰りだと伝えた。
近くに郵便局があったことをふいに思い出した結果、そうなった。
ココアとチーズケーキとストレートティーとチョコチップスコーンが乗ったトレイを手に、女店員がこちらへ歩いてくる。
不慣れなのだろうか。
少しふらついている気がするので、心配そうにその店員を目で追う。
俺らのテーブルの横まで来た時、彼女の手がふるふると震えていることに気づいた。
「ありがとうございます」
緊張しているであろう店員にすべて任せるのは申し訳ないので、ご注文の品をお持ちしましたと言った店員に笑顔を向け、トレイから皿を取る。
「あっ、すみません!」
「いえいえ。お仕事お疲れさまです」
「ありがとうございます! ご注文は以上で宜しいでしょうか」
「はい」
一礼して立ち去る店員は、もう大丈夫そうだった。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時