episode17秋side ページ17
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ただいまー、と家のドアを開ける。
鍵はかかっていないし、中からいつもの声が聴こえた。
「おかえりー秋くん」
自室からリビングへひょっこりと顔を出した幸太郎は、どうやら着替えている様子。
暖房がついているのにまだ暖かくないところから察すると、幸太郎が帰宅してからそう時間は経っていないらしい。
「バイトなのか?」
「うん。秋くん来るからと思ってすぐ行くけど暖房つけたんだけど、まだ寒いね」
4月は極寒ではないが、まだ暖かいと言うには程遠い気温だ。
幸太郎は、自分のためではなく、この人一倍寒がりな俺のために暖房をつけてくれたという。
なんてできる奴なんだ、お前は将来いい嫁になれる。
「こたろうはいい嫁になれるな」
「僕は嫁じゃなくて、なるなら旦那だよ」
「じゃあいい旦那か」
「うん。いってきまーす」
「いってらっしゃい」
幸太郎が外に出て、ドアが音をたてて閉まり、パタパタと足音がした後、無音になった。
帰り道、LINEで早川を誘えたとの報告を受けたので、俺がするべきは次の一手を考えることだ。
某地図アプリの機能で公園付近を調べると、公園を出て右の住宅街を抜けた先にカフェがあると書いてある。
「……よし」
幸太郎にうまくやってもらって、早川を1人でカフェに行かせ、途中で路地から俺がドーンする。
その後は俺が誘ってカフェに行き、幸太郎が合流。
しかし謎の女(俺)が居るので幸太郎は早川にじゃあねと言って帰る。
これで行こう。
多少不自然なのは仕方ない。
計画というのは常に少しの狂いが生じるものだし、細かく決めれば決めるほどその狂いへの対処が難しくなる。
俺は作戦前夜の最終確認ということで、違和感のない女らしい動作を練習するため、先輩に貰った女用の服に着替えた。
目が覚めたのは、最後に時計を確認した4時間後だった。
しまった、寝てしまったと立ち上がると、俺にかけてあった毛布が床に落ちる。
いつ帰ったのか知らないが、気づいた幸太郎が、おはようと笑う。
30分ほど前に帰宅した幸太郎が、「無防備すぎ。襲われても知らないから」と言って葛藤しつつも毛布をかけてくれていたことを、俺は知らない。
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綾音日和。@たこむし(プロフ) - 柚李さん» ありがとうございます! 更新頑張ります! (2017年2月21日 19時) (レス) id: 61bdcd300b (このIDを非表示/違反報告)
柚李(プロフ) - テストお疲れ様です! これからも更新頑張ってくださいね! 応援してます♪ (2017年2月21日 17時) (携帯から) (レス) id: 08c9ef1253 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾音日和。@たこむし | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aromalight2/
作成日時:2017年1月19日 21時