恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ8)

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第7話心地良い音ページ8

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洗面台の鏡から横の時計へと視線を移すと―――‥‥

『ヤバッ……もうこんな時間。完全に寝坊した』

Aの顔からは水滴が滴っている。
棚に置いてあった手触りの良いタオルを手に取り、自身の顔を拭く。

再び自分の部屋に戻り、真珠の飾りがついた薄桃色の小物入れを手に取る。
小物入れの中から薄紫色の砂が入った砂時計の様な耳飾りを取り出し、右耳につける。
この砂時計の様な耳飾りは、Aが幼い頃からつけていた彼女のトレードマークだ。

そして最後に忘れることなく兄からもらった腕輪も着けた。
ピンクダイヤがあしらわれた金細工の腕輪を右手首につけ、自分の部屋の扉を閉めた。

『スタン兄(にぃ)、怒ってるかな…』

Aは憂鬱な気分のまま、階段をゆっくりとおり始める。
Aの家族は兄―――スタンダールただ1人。

リビングに着くと食器がカチャカチャと鳴るが聞こえた。
そして、食器音とは違うもう一つの音…否、声だ。

その声は低音だが深みがあり、相手を落ち着かせるような安心感のある声だった。
Aにとっては一番聞き覚えのある声だ。
その扉の前に立つと、ゆっくりとドアノブを握った。

扉を開けると、其処にはAの兄が居た。

「おはよう、A。流石に学校初日は遅刻するなよ」

『…おはよう、スタン兄(にぃ)』

Aの顔を見ながらスタンダールは優しく微笑む。

Aとスタンダールは兄妹ながらも容姿は全くと言っていいほど似ていなかった。

光の束を集めたような金色の髪は肩の下まで伸びていて、
陽光に反射する癖のない髪はとても美しく、赤色の髪紐がよく映える。
海を閉じ込めたような青い切れ長の瞳は水晶の様だ。

陶器の冷たさを連想させる白い肌の色だけならAに似ているかもしれない。

トーストの焼ける香ばしい匂いと、珈琲ポットからのたてたばかりのほろ苦い香り。
そして林檎に似たカモミールティーの香り。

「…食べたらすぐ学園へ向かうぞ。車で送って行ってやる」

スタンダールは唇を三日月の形に歪めながら、テーブルを指差した。
テーブルの上には、ホテルの朝食のような豪華なメニューがずらりと並んでいる。