恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ7)

今日:4 hit、昨日:7 hit、合計:134,705 hit

第6話始まりの音ページ7

-

Aは部屋の隅にある大きなクローゼットを開けた。

そのクローゼットの中には、
兄から誕生日に贈呈品(プレゼント)してもらったスカート。
そして公園で出会った仲の良い人に貰ったブレスレットやらピアス等の小物が入っていた。

その他にも自分のお小遣いで買った私服が2、3着ある。
他の服は全てAの兄が買い与えたものだった。

一着の服に目が止まる。

今日から通うことになる学園の制服。
クリーム色の上着に赤と黒、白の三色が入ったリボン。
白い襯衣(シャツ)と、ピンク色にも見える薄紫色のスカート。

そしてもう１つ。
ピンクダイヤがあしらわれた金細工でてきた腕輪。
学園に合格した時、兄が選んで贈呈品(プレゼント)してくれたものだ。

あの時の受かった自分より、兄のあまりに嬉しそうな表情を思い出して、Aはくすりと笑った。

クローゼットの中から迷い無く制服を手に取って、腕を通した。

この学園に通うことに決めた理由は主に2つ。

Aの家族は兄のみで、全寮制のほうが都合が良かったこと。
Aの年齢でも通えること、だ。
しかし、これは兄目線での条件である。

Aの決定条件はただ1つ。
校則があまり厳しくなくピアスを着用しての登校が可能だから。

正直な所、制服のデザインはAの好みではなかった。
制服は女子用のものより男子用のものを買おうとしたが、兄が落ち込むので断念した。

『顔洗って、遅れないように準備しなきゃ』

そう言って制服に着替えたAは洗面台へと立った。

水道の蛇口を捻り、水を出す。
その水を手で汲み取り、自身の顔へとやる。
まだ微睡の中に居たAには覚醒するに十分な冷たさだった。

『ふぅ…。冷たッ……』

目の前の鏡へとAが視線を向けるとそこには少女が一人。

腰辺りでふわりと靡く黒色のふわふわとした癖のある髪。
左右には猫の耳のようなアホ毛がある。
猫耳のようなその毛だけはAがどんなに手入れをしようとなおることはなかった。

雪の様に白く、陶器の様に透き通った滑らかな肌。

ピンクダイヤの様に美しい瞳と、
そして宝石の様にキラキラとした大きな瞳を囲む細く長い睫毛。
すっと通った鼻筋に形の整った林檎の様に赤い唇。

桜のような儚さを持つ、西洋人形の様に整った顔立ち。

浮世離れした雰囲気を纏ったその少女は―――紛れもないA自身だった。