恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ50)

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第49話青炎と知識欲ページ50

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Aは走っていた。
ベリアルの制止を振り切り外へと出ると、学園の最下層へと夢中で駆けていく。
服装はメフィストが用意していた黒いワンピースデザインのもの。

靴はサンダル故に走りにくいが今のAには関係なかった。
〝あの炎の近くにサマエルが居る〟

証拠はない。
サマエルが司るのは〝時間と空間〟でありあの青い炎ではなかった。
しかしAはそう確信していた。

『っ……氣精(シルフ)！手伝って頂戴!!』

このままでは時間がかかりすぎると思ったAは親指を自身の歯で噛み血を出すと、
詠唱もなしに中級の悪魔を呼び出した。

A・ナアマに悪魔召喚の知識はなかったが、
リリスやシャルル・ファウストとして生きてきた記憶が戻った今の彼女は
八候王(バール)でない悪魔であれば対価によって無詠唱で呼び出すことができるようになっていた。

氣精(シルフ)を召喚したAは風を操り自分では出せないほど速いスピードを出す。
正直言ってAが走っているというより氣精(シルフ)の起こす風によって運ばれているようなものだ。

“今度は普通の女の子になりたい”

これはAの前世シャルル・ファウストが死ぬ間際に言った事だ。
Aの行動がその発言と矛盾していることは分かっていた。
記憶を取り戻した時、サマエルを追うか迷わなかったわけではない。

あの部屋で待っていれば、サマエルは遅くはあれど帰ってくるのだから。
自分で向かわずとも、あの白い悪魔は自分の元へと帰ってくる。
それは分かっていた。

普通の子として生きたいのであれば、これ以上理事長(サマエル)と関わるのをやめるべきなのも理解していた。

『一滴だけじゃなく、もう少しあげるからスピードはやめて！』

理解はしていたが、納得は出来なかった。

時の王であるあの男が自分に近づいた理由も。
悪魔召喚もできない小娘に時間を割く価値も。
記憶を戻させることなく側に居続けた意味も。

何もかも、Aにとってわからないことだらけだったから。

目の前に広がる炎。
Aの見間違えでなければ、地の王であるアマイモンと学園で知り合った燐が戦っていた。
青い炎は燐が使っているように見えた。

Aの記憶の中の知識を総動員しても〝青色の炎〟を使う悪魔はいなかったし、
燐のような見た目の悪魔も知らない。

――そしてAは思ってしまった。
〝平穏な生活が消えても良いから、あの青い炎が知りたい〟と。