第46話 地王の怒り ページ47
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アマイモンは常々思っていた。
なぜ兄上はリリスに魔障を受けさせないのか、と。
魔障さえ与えてしまえば悪魔が見えるようになる。
悪魔が見えても祓う術を持たないリリスは誰かを頼らざるを得ない。
その�狠�か�瓩房�分達がなる方が余程合理的ではないか、と。
記憶を取り戻さなくとも、リリスが傍を離れない確約を得られる。
記憶のないリリスでも良いなら、そうすれば良い。
兄上がその行動を選ばないのは、記憶を取り戻してほしいから？
ならば無理矢理にでも思い出させてやればいい。
兄上を呼び出した時を再現するか、リリスの手に悪魔関連の本を与えればいい。
だが兄上はそれもしない。
アマイモンはリリスと仲が良かった。
アマイモン直々にお手製の香水を作って与える程度には。
「……気に入らない」
邪魔だ。
兄上も、
リリスが記憶を取り戻さずとも、悪魔が見えるようになればボクが傍に居られる理由になるのに。
リリスの記憶が無くとも、リリスの血は相変わらずお菓子より甘い香りがするのに。
―――リリスの血が欲しい。
あの甘い血が。
どんなに美味な菓子もリリスの血には及ばない。
あれ以上に美味いものは今も昔も存在しない。
記憶もなく、悪魔も見えないリリスの血を飲むことはできない。
そんなことをすれば確実に兄上の逆鱗に触れることは予想できる。
「
“兄上の怒りに触れればリリスに会えなくなる”それが分かってるアマイモンは、
Aにリリスとして生きた時の記憶を取り戻させたくても手荒な真似はできない。
その怒りをぶつけたくとも、ぶつけられない。
アマイモンは、怒りが火の玉となって体を駆け抜けるのを感じた。
その怒りは燐への不満へと形を変え、
アマイモンはバネのように跳ね上がると、その凄まじい勢いのまま燐達のいる方へと降りていく。
「ひゅーーー…シュタッ」
ボンッと大きな音を立てながらアマイモンは着地する。
「ゴー、ベヒモス！」
じゃら、と鎖が落ちる硬質な音。
主人であるアマイモンの命令と共に獣の吠える声が暗い森の中に響き渡る。
グルルオオ゛オ゛というベヒモスの声は怒りで震えているようにも思える。
まるで主人の感情に影響されたような低い唸り声だ。
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作者名：森ミク | 作成日時：2020年2月11日 19時
