第35話 地王と再会 ページ36
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―――季節は六月。
徐々に南から北へと移動してきた梅雨前線の影響で
この正十字学園町も、此処のところ毎日雨続きである。
低気圧のせいか、なんだか気分もひどく憂鬱だ。
『ああ、怠い〜。雨好きだけど…つまらないな』
Aが独り言を溢せば、横から声が降ってきた。
「A、今日は外に行かないのですか？ボク外に行きたいです」
ソファでうつ伏せに転がっていたAが気怠げに顔を上げれば
視界に入ってきたのは、ソファの真横にしゃがみこんでいるアマイモンの不機嫌そうな顔だ。
不機嫌そう、とは言っても親しくなったAだからこそわかる程度の仄かな変化だ。
普通の人間からすると、アマイモンは無表情で何を考えているかわからない、
という答えが返ってくるだろう。
いつの間にこんなに近くにいたのか、アマイモンは眉根を寄せて(と言ってもAがわかる程度)
鼻と鼻がくっつきそうな距離で、何やらブツブツと文句を言っている。
「Aは兄上にお会いしましたか？」
『いや、もう何十回目になるかわからないけど…私は
「そうですか、残念です」
ここはA専用の寮部屋だ。
なぜアマイモンが居るかというと…丁度一か月ほど前に再会したから。
そこで再び意気投合(？)した二人は不定期に会う仲になっていた。
友達というには近すぎて、家族というには遠すぎる。
かといってお互い恋人という雰囲気は皆無。
そんなよくわからない関係性だ。
因みに2度目の再会で連絡先は交換したが一度もやり取りは行っていない。
『私は部屋にいるけど…兄上とやらと一緒に遊べば良いんじゃない？』
「イヤです。兄上にまだ大人しくしていろと言われたので暇なんです」
アマイモンを無視して、くるりと顔を反らしてまたうつ伏せに寝転がる。
折角ヨハン理事長が絡んでこない休日だというのに、こんな雨じゃ何もやる気が起きない。
今日は、久しぶりに街に購い物に行ったあと隣町に新しく出来たカフェにでも行って
優雅な休日を堪能しようと思っていたのに。
雨のお陰で全部台無しだ。
全く、嫌な季節である。
「なぜまた寝転がるんですか」
『寝転がって何が悪いの』
「？A、今日は買い物ついでに隣町のカフェに行くと言ってましたよね」
『そうだけど、こんな天気だし行く気も失せた』
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作者名：森ミク | 作成日時：2020年2月11日 19時
