恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ4)

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第3話狂い出す秒針ページ4

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シャルルが死んだ。
否、死んだのではない。
メフィストが従える眷属死神(デス)で殺したのだ。

“ねえ、サマエル。最期のお願い、私を殺して”

お願いだなんて馬鹿馬鹿しい。
命令すれば主人である娘に逆らえはしないのに。
メフィストはその願いを叶えた。

メフィストが欲していたのは〝神に愛された女の魂〟だったから。
殺すことに躊躇はなかった。

女の魂が手に入らなかったのは些末な問題だ。
ただ、大きな問題はここからだった。

今度は女の魂がメフィストとの契約を違え、手に入らなかった。
娘が神に愛された魂だということを、メフィストは甘く見ていた。

女が神に愛された魂を持っている。

それを知りながら警戒を怠ってしまったのだ。
怒りがふつふつと湧いてくるが、完全に自らの落ち度である。
メフィストは前回同様、女の死に顔を覗き込んだ。

“私、今度は普通の女の子になりたいわ”

死ぬ間際の少女が、最後に口にした言葉がメフィストの心を縛る。
ああ、またお前は私を縛るのか、と。

どこまでも不可解で、非効率的なこの世界を支配するシステム。
100％なんてものも絶対的と決められている理もない。
そんな中で自分にあの女は言った。

“再び生まれてくる”と。

女はメフィスト同様嘘吐きだった。
しかし面白いことに周りからの信用も高く厚い信頼を寄せられていた。

それは何故か。

女が言ったことは嘘だったとしても後々真実へと変化していったから。
メフィストが手を入れた訳では無い。
女自身がそう行動した訳でもない。

簡単なことだ。
女が"神"という存在に愛されていたからだ。

女が"死"を望んでも、寿命がこない限り訪れることは無い。
女が"自殺"しようとすれば、神の愛故に未遂に終わる。

そんな女が言ったのだ。
“再び生まれてくる”と。

確証は無いがメフィストは確信していた。

メフィストが娘の墓に背を向ける瞬間。
視界の端で娘が優しく微笑んでいるように見えたのは、メフィストの気のせいだっただろうか。

“普通の子になりたい”？
残念ながら悪魔の王に目をつけられた時点で叶わない夢物語だ。

今度こそ、逃がしてなるものか。
死んで手に入らないなら、生かし続けよう。
女が望もうと望まざるとに関わらず、己の傍においておけばいい。

「……あぁ、あまりにも待ち遠しい」

ぽつりとそう呟いて、いつか訪れるであろう女に目を奪われぬよう、ゆっくりと瞼を閉じた。