第22話 重なる秒針 ページ23
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メフィストは、ぴたりと足を止める。
表情を伺おうにも、帽子と身長差によってメフィストの表情はよく見えない。
Aの問いにメフィストは笑ってから、漸く口を開いた。
「…心配ですか？私のことが」
『？当たり前――』
「なぜ？」
遮るように云ったメフィストは、Aの瞳をまっすぐに見つめた。
見えないにも関わらず下級悪魔を引き寄せているA。
結界が無い学園内にでれば確実に中級以上の悪魔もAに魅入るだろう。
その容姿から周囲の目を引き付けているのは知っていた。
学園に入学して一週間も経っていないが、Aに何人か振られているというのも耳にした。
昔はそんなことが当たり前で、それを含めAを気に入っていた。
数少ない私好みの玩具として。
だが何故だろう、今は面白くない。
退屈ではないが、気に入らない。
『なぜって……元気がないように見えたので』
「初対面の私の体調を貴女がわかるのですか？」
『…じゃあ、何て言えば満足――』
その瞬間だった。
そう答えるAの口を塞ぐように、メフィストは自身の唇を重ねた。
あまりに突然の出来事に、Aは瞬きを忘れて大きく目を見開いた。
ピンクダイヤの瞳が相変わらず美しい、とメフィストは思った。
メフィストは右手でAの後頭部をぐっと押さえつけ、奪うように唇を重ねた。
熱いナニかが口内に浸食してきたのを感じた瞬間、
我に返ったAは勢いよくメフィストの胸板を押し返した。
『……ッ生徒に何するんですか!?』
「……別に。したかったからしただけです。
まあ他にも理由はありますが、忘れっぽい貴女には言わなくていいでしょう」
メフィストはふっと微笑みながら言った。
瞬間、Aの掌がメフィストの頬を叩く。
ぱちん、と渇いた音が静かな道に切なく響いた。
『セクハラへのお礼はこれで済ませます。
…私だったから良かったものの、他の生徒なら確実に訴えられますよ』
「ご安心を。貴女以外に手を出す予定はありませんので」
Aは“それはそれで問題だろ”と思った。
Aに頬を叩かれたというのに何故かメフィストの機嫌は直ったようだ。
『私は瞬間記憶能力"カメラアイ"を持っています。忘れることはありません。
……でも、ファウスト理事長の態度を見るに私は貴方と知り合いだ』
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作者名：森ミク | 作成日時：2020年2月11日 19時
