恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ29)

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第28話道化師は誰ページ29

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雪男が道化師の意味を燐としえみに教えていた、その時だった。
少し乱暴に調理実習室の扉が開く音が響いた。

Aを除く3人が何事かと頸を傾げていれば、
硬い靴音が徐々にA達の座っている席へと近づいてくる。

生徒の誰かだろうと振り返ってみれば、其処には―――

「ちょっと貴女。なぜ私の着信を無視するんです⁉」

道化師のようなデザインの真っ白い服に身を包み、威圧感を滲ませながら―――
メフィストはAに鋭い眼光を浴びせている。

『こんにちはファウスト理事長。何かありましたか？』

Aがきょとん、とした表情で訊ねれば、メフィストは露骨に顔を歪めた。

「何度も電話を鳴らした筈ですが？Aさん。貴女、〝携帯電話〟の意味を知っていますか？
　携帯していないのであれば、携帯電話の意味がないでしょう」

尤もらしいような、らしくないような事を言いながらメフィストは
当然の様にAの隣の席に腰かける。

『電話、ねえ』

Aの気の抜けた声が響く。

雪男は、おそるおそる燐としえみの顔を見る。
そして、雪男は悟った。
〝道化師〟の正体を。

「何度かけても1度も出ないなんてひどすぎません？
　ああ、奥村くん。日替わりランチミソスープ大盛りで1つ」

『メール入れたじゃないですか。今日の昼食は調理実習室でとるので行けません、って』

Aが呆れたように言えば、その話の内容に雪男はぽかん、と口を開けて呆然としている。
不思議に思った燐は茶碗を持ってない方の手で、雪男の肩をつんつんと突いてみせた。

「雪男？お前だいじょーぶか⁇」

雪男はハッと我に返ったように燐に向き直る。
そして、震える口を小さく開いた。

「携帯電話の〝道化師〟はフェレス卿…？」

「えっ!?メフィスト!!?」

「馬鹿。声が大きいッ」

燐の作った定食をしえみがメフィストに運んでいる。
メフィストは学園内でヨハン・ファウスト五世を名乗っているため
Aに聞こえないよう雪男は両手で燐の口をふさいだ。

燐が慌てて口を噤んでからメフィストを見た。

真逆、Aに連続して着信を残した〝道化師〟の正体がメフィストなどと誰が予想できただろう。
驚く燐と雪男に、メフィストは特に気にする様子もなく
持ってきた小さな紙袋もAに渡してから、口を開いた。

「私は貴方達に商売させるために調理実習室の使用を許可したわけじゃありません」

メフィストがうんざりした顔で定食を食べながら言う。