恋は盲目、愛は執着【青の祓魔師】 (ページ20)

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第19話魅了する女ページ20

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「Aさんは偏食ですね」

〝魔性の女〟
A以上にこの言葉が相応しい相手をメフィストは知らない。

悪魔の中にはこういう言い習わしがある。
“リリスの敵の不幸は、敵がリリスであること”
リリスとは"夜の魔女"であり、私と最初に契約した女の名前でもある。

リリス(目の前の少女)は悪魔を誘惑するために生まれてきたような人間だ。

夜の魔女リリス。時の花嫁シャルル。
この2つは、A・ナアマが持つべき肩書である。
少女とも見粉うような者がそれを名乗るとなれば、事情を知らぬ祓魔師(人間)には笑い話だろう。

だがしかし。
ここ数百年で正十字騎士團が得た利益のおおよそ半分はAの功績に依るものだ。
正確に言えばA・ナアマの1度目と2度目の人生による功績(もの)。

彼女の知識欲を書き留めたノートを基に悪魔図鑑が作られ、
彼女の得た経験を基に悪魔薬学が発展していった。

その総額が何百億になるのか、そのために踏み潰された命が何百人になるのか。
悪魔(時の王)であるメフィストにとっては瑣末な事だ。

無論――代償のない栄光など存在しない。

女は悪魔ではないにもかかわらず、悪魔として図鑑に記載されている。
正確に言えば悪魔を魅了する女(・・・・・・・・)として載っているのだ。
それこそ双皇(ソール)や八候王(バール)と肩を並べる程に有名な名前になっている。

祓魔師(エクソシスト)の中でも有名な話だ。
夜の魔女リリスは、数多の悪魔を魅了した。
時の花嫁シャルルは、創造皇(シェミハザ)とアザゼルを口説き落とした。

―――彼女を騎士團に入れたらどれほど愉快な事になるだろう、とメフィストは思った。

『…そういうファウスト理事長も、カップラーメンより学食を食べたほうが宜しいのでは？』

顔と声がどんなに美しく綺麗でも、口から出る言葉が美しいとは限らない。

それは睨むような、軽蔑するような、あきれたような表情であるが彼女はどうやったって美しかった。
どんなに変な顔をしようが、変な顔にはならない(・・・・・・・・・)のだ。
思わず見惚れてしまうような美しい少女の素顔が悪魔も魅了する女。
しかも時の王の執着してる娘などと、一体誰が想像できただろう。

初めて彼女を見たときには、私も大層驚いたものだ。
―――こんなに美しく可憐な少女が悪魔も驚く程の膨大な知識を保有するなど、誰が思うだろう。