君色を瞳に映して【爆豪勝己】 (ページ5)

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ある程度お互いの事を話し、だいぶこの空間に馴染めてきた気がする。が、穏やかな空気が流れていたのに。

「うわっと、何々刺客の襲来？」

ガツンと椅子を何者かに蹴られた衝撃。

「おい。」

ドスの効いた声。

瞬時に判断した。あれだ、クラスに1人は居る一軍ヤンキーだ。関わらんとこ。
相手を視界に入れないようにと、私は下を俯く。

「テメェ……、ここに来た時1番とかほざいてやがったなァ？」

ｱｯすみません、あれはうっかりと言いますか、思わず言ってしまったと言いますか、あぁほら、あれ。言い訳を考えてたら、間違えて上司に番号を言っちゃったって笑いネタ話。あれですあれ。まさか自分がやるとは夢にも思ってなかったな〜、ねぇ、貴方もそう思いませんか？まだ見ぬ不良さん。

「俺の事を無視たァどういう事だ、あぁ"？」

なぁーんて、言えたら良いんだけど。

「テメェ……」

不良さんは後ろから机の前へと移動する。周りに群がっていた生徒達は一斉に場所を開ける。何だこれは。序列社会の闇をこんな間近で体験できるとは。今の中学生ヤバい。だけどそれよりも私の語彙力とこの現状がヤバい。

「人と話す時は目ェ見て話せって、習わなかったんか。あ？」

ガシッと頭を掴まれた。誰か女の子の息を呑む音が聞こえた。

「舐めとんのか、モブ風情が。」

その瞬間、グイと頭を押された。必然的に私の顔は上を向く事になる。
何だろう、新手の転校生いじめかな。サヨナラ私の平和な学生生活。約20分弱の思い出はきっと忘れない。

最期にコイツの面でも拝んでやろうと目を開く。一体どんな悪人面をしているのだろうか。

が、次の瞬間、息を呑むのは私の方だった。

「綺麗………。」

一体どんな悪人面をしているのかと思ったが、私は間抜け面を拝むことになった。

が、そんな事はどうでも良いほどに、私の視線はその男に＿＿＿正確には、彼の瞳に釘付けになっていた。

澄んだ、緋色の綺麗な瞳。
彼の頬は、瞳と同じ朱に染まっていた。

「………ｯ、んだテメェ！」

ぎゅっと握り締められた拳が振り下ろされる。
あ、殴られる。

ほぼ反射神経だった。私の瞳は恐らく、彼と同じ色をしているのだろう。
彼の動きは完全停止している。まるで録画された番組を一時停止させたように。

「……＿＿はっ、」

それも一瞬だった。マリオネットの糸がプツンと切れたように、彼は体勢を崩す。私の目の色も、グレーに戻っているのだろう。