君色を瞳に映して【爆豪勝己】 (ページ29)

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「えい。」

「痛てぇ、あんだよ。」

「置いてった。」

「テメェが起きるのが遅かったのが悪ぃ。」

カツキの隣に座っている出久が苦笑いをしながらこちらを見ている。

今日は雄英高校の入試当日。先程私達は筆記試験を終わらせてきたところである。
そして何故私が機嫌が悪いかと言うと、前日から試験会場に一緒に行こうとカツキと約束をしたのに、置いていかれたのだ。

確かに私も寝坊はした。

けど！

「起こしに来てよ！！」

「テメェのせいで俺まで遅刻するのは嫌だっつーの。」

この野郎。

「ロボットを倒しゃ良いのね……、そんなん楽勝〜。カツキも出久も頑張って落ちないようにね。」

「あ"？たりめぇだ！つーかデクとか論外だろ。」

「で、でも、やってみないと分からない、というか……」

「あー、こらこら。喧嘩しないの。私達会場バラバラだけどさ、同じ学校仲間として一緒に合格したいじゃん？」

「俺一人が受かりゃじゅーぶんなんだ。」

「でもこの前、絶対落ちるなって言ってたよね。」

「テメェが勝ち逃げしねぇように、高校まで持ち越しって事だ。」

だから絶対落ちるな、とだけ言ってカツキはとっとと会場へ向かった。

「彩瀬さん、凄いね。」

「ん、何が？」

「かっちゃんが今まで認めてきた同級生なんて、彩瀬さんくらいだよ。」

「そっかぁ…。」

でもね、出久くん。カツキが私のことを認めていても、私は凄くなんか無いよ。

ただの弱虫。

ここにいる理由だって、自分の気持ちだって、本当は分かっちゃいない。

押し潰されそうで、怖いんだ。

「実技試験、頑張ろうね！」

「う、うん、頑張ろう！それじゃまた！」

「またね。」

試験前に変な事考えるのはやめよう、今はただ、目の前の目標に向かって。