君色を瞳に映して【爆豪勝己】 (ページ14)

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「魘されてたぞ、テメェ。」

「……そっかぁ。」

カツキが何かをこちらに放り投げて来た。反射的にそれを取れば、それはハンカチだった。黒い柄のない、単調なハンカチ。

これで涙を拭けということだろうか。全く、不器用な優しさだ。

「カツキは何で？帰ったんじゃないの？」

「担任と話してた。」

何を、とまでは言わなかったけど、恐らく進路について。
カツキの事だし、内申に響く程の事はしていないだろう。みみっちい男だ。

「テメェこそ何で帰ってねーんだよ。」

「傘が無い。」

「根性で帰れや。」

「生憎馬鹿じゃないんで風邪引きますー。」

「アホか、馬鹿でも風邪ひく時ゃ引くんだわ。」

「つまり私に風邪を引けって言いたかったのかなぁ？！」

信じられない。やっぱりこいつは女の子の扱い方を学ぶべきだと思う。高橋さんに教えてもらえ、ロールケーキ貰えるぞ。

「帰んぞ。」

「ねぇ、何で君たちは私の話を聞いてくれないの？傘ないんだって。」

「だから帰るっつってんだろ。」

「だからァ！…………あ。」

本当に不器用。分かりにくい。言えばいいのに。

「優しいカツキに感謝だねぇ〜。」

「うっせ。」

きっとさっきのも、泣いていた私に気遣って。
あの時、涙を忘れていた。忘れられていた。

カツキと言葉を交わすようになって。カツキの事がだんだん分かってきた。
初めての出会いは最悪だったけど、それなりに好感度は順調に上がっている……気がする。

「ね、カツキ。私はみ出てる。濡れてる。寒い。」

「入れてやってんだから文句言うな。」

「いや普通気遣ってカツキが濡れてくれる所じゃない？」

「ザケンナ、俺の傘だ。」

「それはそうだけどさァ！！！」