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「僕は、もう前を向いた。あの頃の僕は、今はもう思い出になった。
だからそれは……母さんの思い出として、持っていてほしいんだ」
――あの頃、確かに今とは違う僕がいたことを、忘れないように。
そう言って微笑む我が子の顔が、本当にどこまでも穏やかで、優しくて。
春江はまた、瞳に涙を滲ませた。
「えぇ……っ。絶対に忘れないわ……。あの頃のあなたも、今のあなたも。私にとってはどれも同じくらい、愛おしい存在なんだから……」
あの当時は、辛くて、何も見えていなくて。
自分の事しか考えられず、今を生きる大切な人の存在に気付けず。
こうして言葉にすることは出来なかった。
けれども、今は違う。
時の流れが少しずつ傷を癒し、そしてようやく側に居続けてくれた小さな愛に気付けたのだ。
「……ありがとう、母さん」
この日の夜、春江は忘れかけていた我が子との穏やかな時間を取り戻すため、精いっぱい自分にできることをした。
我が子が好きだった料理を作り、眠るまで共にテレビを見て、笑い合って。
限られた時間の中で、春江はこれまでにない幸福に身を委ねた。
――次に会えた時は、笑って出迎えてあげなくちゃね。
そう、思いながら。
***
翌朝。
「気をつけてね。体調管理は、しっかりするのよ」
我が子と共に空港へ行った春江は、フライトの時刻が迫ると、そう我が子に語り掛けた。
「うん。心配しないで」
「また、帰って来る時は連絡してね」
「もちろん。……次は、そんなに間が空かないようにするから」
「約束よ。でも、無理はしなくていいからね」
「うん。ありがとう」
そんな何気ないやり取りを交わしていると、我が子の背後から手を振る一つの影が。
TH「レン〜！ そろそろ時間っ！」
「テヒョンっ！ 分かった！」
――テヒョン。
その名を聞いたのは、これで二度目だ。
昨夜我が子が愛おしそうに言っていた、仲間の一人。
そして我が子を、ここまで支えてくれたという人物。
(――いい友達を持ったのね、A)
それが本当に友達という言葉に納めていい存在なのか、はたまたそれ以上なのか。
今の春江に、明確な区別はつけられない。
けれども。
(これからはAらしく……誰かを愛して、愛されて。それで、いつか……)
相手が女の子でも、男の子でもいい。
自分が愛すると決めた人を、私にも教えてくれる日を。
(気長に、待っているわ)
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グミカン(プロフ) - 塩水さん» 読んで下さっていたのにも関わらず、身勝手な判断で更新を止めてしまい申し訳ありません。現在新たに書きたいテーマが出来ましたので、時間に整理がついたら書いていきたいと思っています。せっかく読んで頂いたにも関わらず、重ね重ね本当に申し訳ございません。。 (2022年10月23日 3時) (
レス) id: 4c30d065bb (このIDを非表示/違反報告)
グミカン(プロフ) - 塩水さん» 塩水さん、遅くなりましたがコメントありがとうございます・・！完結から時間が経っているにも関わらず、このような感想が頂けたこと、大変光栄に思います。３人の彼女についてですが、自分の中で色んな考えの変化があり、更新を断念させていただきました。 (2022年10月23日 3時) (レス) id: 4c30d065bb (このIDを非表示/違反報告)
塩水(プロフ) - 新しい世界を見せてくれたこの作品と作者様に出会えて、本当に嬉しいです。それと、以前投稿されていた「3人の彼女。」という作品は、もう読ませて頂く機会は無いのでしょうか?このような場所で質問してしまい、申し訳ありません。 (2022年7月12日 20時) (レス) id: ca8e68c7c0 (このIDを非表示/違反報告)
塩水(プロフ) - グミカン様こんばんは。シリーズ全作品読ませていただきました。紅一点とも男主とも違う、他の作品とは一線を画すものに惹かれてこのシリーズを読み始めましたが、進めば進むほど作者様の膨大な知識や広い視野を垣間見たようで、どんどんのめり込んでしまいました。 (2022年7月12日 20時) (レス) id: ca8e68c7c0 (このIDを非表示/違反報告)
グミカン(プロフ) - 無気力boyさん» コメントありがとうございます！ ほとんど見切り発車で始めた小説、しかもコアな設定で自己満的な部分もあったかと思いますが、こうして今でも嬉しい感想を頂けること、ありがたく思います。。最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました＾＾ (2020年12月13日 15時) (レス) id: 86c7dc8dad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：グミカン | 作成日時：2020年4月29日 16時
