9. 恋する少女と、二人のストーカー ページ25
.
それは、１０月下旬のこと――。
MN「レンさん、どうですか？」
「……うん。すごく美味しい」
山奥にぽつりと佇むカフェで、穏やかな時間を楽しむ二人の姿があった。
MN「よかった。前は言いそびれたんですけど、ここのドリアがすごく美味しくて、レンさんにも食べてほしかったんです」
「そっか……前は、そんな時間もなかったもんね」
そう言って仲睦まじく微笑みあう二人の客以外、ここにはいない。
いわば貸切状態である。
なぜ貸切状態かと言うと、二人はこう見えて多忙な日々を生きるアイドルだからである。
そしてこのカフェは、事前に身分を伝えて予約することで貸切が可能な、芸能人うってつけの憩いの場だった。
そんなこんなで、二人は今“初デート”というイベントを楽しんでいる。
それは時間の縛りがある束の間の癒しであるが、それでも二人は幸せそうに笑っていた。
MN「レンさんって、本当に穏やかですよね。今までも、すごくモテてたんじゃないですか？」
「え？ な、なに、急に」
MN「気になるんです。その……やっぱり、“彼女”になると」
そう戸惑いがちに言われ、Aはやれやれと頭を掻いた。
「そんなことないよ。だってほら……僕、一応は“女”だから……」
するとミナが、まずいことを言ってしまった、と慌てて手を振る。
MN「ご、ごめんなさい……！ その、変なこと聞いて……っ！」
「ううん。全然いいよ。僕、気にしてないから」
Aは言いながら、柔らかくも儚い微笑を浮かべた。
MN(あぁ……これだ、)
ミナは、テーブルの向かい側に座る相手に見えないよう、赤くなった顔を俯ける。
いざという時は、まるで男の子のように凛々しく守ってくれ、だが普段は溶けそうなほど優しくて可愛らしい。
ミナは、そんなAのギャップがたまらなく好きだった。
MN「レンさんが、私の“彼女”……か」
普通に考えてみれば、ただの女の子がパートナーを“彼女”と呼ぶのには違和感がある。
けれども、ただの女の子だったミナが相手をそう呼ぶことさえ幸せに感じられてしまうのだから、恋というものは不思議だ。
MN(好き……だな)
もはや理由なんてない。
ミナはただただ溢れる想いを視線に乗せて、Aを見つめる。
そして、ドリアをゆっくり咀嚼していたAがその視線に気付き、ぴたりと動きを止めた。
MN(近づきたい……あなたに、触れてみたい)
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
グミカン(プロフ) - noenunaさん» noenunaさん、コメントありがとうございます。。 そう言ってくださる方がいて、作者心底ほっとしております!! なにせ趣向が偏りがちの作品で……。笑 もう少しですが、完結するまで頑張りますので、どうかお付き合いいただけると幸いです。。 (2020年1月3日 22時) (
レス) id: bc74e0fc10 (このIDを非表示/違反報告)
noenuna - こんにちは。連載当初から読ませて頂いておりましたが、この章の展開にはたまらずコメント残させて頂きました。本当に素敵なお話で読むたびに胸が熱くなります。今後も陰ながら応援しています。どうかお身体にお気をつけて下さい。更新を心から楽しみにしております！ (2020年1月3日 16時) (レス) id: e077cb6cb1 (このIDを非表示/違反報告)
グミカン(プロフ) - ポンポネッラさん» ポンポネッラさん〜!! 毎回コメントありがとうございます。。更新滞ったりしていて申し訳ないですが、こうやって読んでくださる方がいるおかげで頑張れます〜！ あの残り短いですが、みんなの恋がどうなっていくのか、見守ってあげてくださると嬉しいです。。 (2019年12月21日 16時) (レス) id: bc74e0fc10 (このIDを非表示/違反報告)
ポンポネッラ(プロフ) - 続編おめでとうございます！ 遂に恋心を自覚したメンバーが.......！ これからどうこの恋が動き出すのか私もドキドキワクワクしています。グミカンさん、更新頑張ってください！ (2019年12月16日 14時) (レス) id: 96af192ec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：グミカン | 作成日時：2019年12月16日 0時
