Life of BTS はじまりの鐘 (ページ10)

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「……そうか、またか」

「ええ。ミンソクさんの知り合いが経営しているダンススタジオの生徒さんだそうで」

「ミンソクの知り合いか。で、応募書類は？」

「それが……」

***

パン・シヒョクは頭を抱えた。

本社に帰って早々、焦った表情で駆けてくる秘書を見て嫌な予感はしたが、まさか。
デビュー計画で多忙を極めていて、休む時間も惜しいと言うのに。

「……どうしますか？」

秘書がおそるおそる尋ねると、シヒョクは盛大に溜息を零した。

「もう本社にいるんだろ。……帰れと言うのも、酷だ」

「分かりました。すぐに役員を集めて、部屋の準備をします」

そう言って秘書は急ぎ足でどこかへと消えていった。

いくらなんでも、型破りすぎる。
シヒョクは再び盛大に溜息を零すと、代表室の椅子にどさりと腰を下ろした。

秘書の話によると、かねてから知人を伝手に広めていた日本人メンバーのオーディションに、新たな応募があったとのこと。
しかも書類選考を介さず、直接日本からここまで来てしまったのだと言う。

事前連絡もなしに、なんて非常識な人間だと思う傍ら、学生時代の後輩であるミンソクの紹介となると断るに断れない。
彼にはそのうちグループのダンス指導を依頼するつもりだからだ。

これまでにも数人ほど応募があり、その度に書類選考を経て二次審査を開催したが、デビューメンバーはおろか、練習生にしたいとさえ思えないような人材ばかりだった。
そのため、あまり気乗りしない。
今回もどうせ、時間の無駄になるのだろう。
シヒョクはそう思っていた。

「シヒョクさん、準備ができました。15分後に始めます。場所は502号室のスタジオです」

代表室に顔を見せた秘書は、そう言ってまた慌ててどこかへ消えていった。

仕方がない、とシヒョクは重い腰を上げる。

応募書類を出さなかったのは、自信がないからか、はたまた無駄に自信が漲っているからか。
どちらにせよ、業界でやっていくには礼儀作法のなっていない人物であることに変わりはない。

(日本人がいなくても、今いるメンバーならきっとやっていけるはずだ……)

シヒョクはそう思いながら、502号室へと向かった。