2. いつも終わりは突然に ページ5
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2012年、３月。
高校生活１年目を修了し、学生たちは各々に冬休みを満喫していた。
Aはといえば、当然のように毎日ダンススタジオに顔を出している。
先月に行われた全国ダンス大会高校生部門で優勝を納めたAは、遂にワークショップを開くまでになり、連日多忙を極めていた。
「A。」
「清華？ ……随分と、早く来たね」
「なに、ダメ？」
「いや、嬉しいよ。まだ片付け終わってないから、悪いけどロビーで待ってて？」
嬉しいよ、だなんて、その微笑みでサラリと言われたら……。
ロビーに移動した清華は複雑な気持ちで、ソファに腰掛けた。
――どうして、恋人になるなんて言ったんだろう。
決して軽はずみで言ったわけではない。
けれど、あの時清華がAを男として見ていたかどうかは、自分でも不明だ。
今となってもそれは分からない。
幼馴染として、Aを女だとか男だとか、そういう意識で見たことがない。
だから、所謂“同性愛”と呼ばれるAとの歪な関係が、自分でも不思議で仕方がなかった。
Aに優しくされるとどきどきするし、いつも柔らかく微笑んでいるAの真剣な表情や、激しいダンスを踊っている時の男らしい表情にも、胸が締め付けられるような高揚を覚える。
これを“恋”と呼ぶかどうかは、今まで誰かを好きになったことのない清華には分からなかった。
「……寂しい」
ただ、ずっと隣にいたい。
それだけのことが、Aの体が“女”というだけでこれほどまでに難しいだなんて。
キスをしてと言っても、Aは微笑んで誤魔化す。
もちろん性行為なんて、できもしない。
いつか子供が欲しいと思っても、無理だ。
ましてや結婚さえ、認められないだろう。
清華は不安だった。
この歪な関係を、このまま続けていくことが。
「お待たせ」
階段から降りてきたA。
黒のマッシュヘアで半分ほど隠れた瞳が、嬉しそうな色を宿している。
去年までずっと綺麗な黒のボブヘアで、端正な顔立ちと紳士のような振る舞いから『ハク様』と呼ばれていたAは、清華との交際をキッカケに髪を切った。
清華の隣に歩く時、できるだけ男に見えるようにと。
「で、どうしてこんな早く来たの？」
Aの問いかけに、清華はごくりと喉を鳴らした。
「話があって」
「話？」
「……A。私達、別れよっか」
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作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
