Life of BTS はじまりの鐘 (ページ21)

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その従業員は、可愛らしく、とても明るい女性だった。

やたらと話しかけられるので、A自身も彼女の下心に気付いたらしい。
しかしAは嫌がるどころか、かすかに頬を赤らめながら、どこか嬉しそうに相手をしていた。

そして従業員が去った後。
それまで黙って見ていたメンバーの一人、ジンが口を開いた。

JN「いまの人、すごく可愛かったな。
A、すっごい気に入られたみたいだけど、どうするの？」

ジンの質問はただの雑談のフリのように聞こえるが、そうではない。

これからアイドルになる彼等にとって、デビューを控える現状での恋愛は、ご法度だった。
だからこそ、ジンは「どうするのか」と問いかけたのだ。

この店は宿舎に近く、練習生たちもよく利用する。
もしもここで密な関係ができてしまえば、やがて問題になりかねない。

しかしAの返答は、意外なものだった。

「どうもしませんよ。確かに可愛い女性だったし、照れちゃったけど。
でも、ジニヒョンだってそうですよね。
素敵な女性に話しかけれられて、嬉しく思わないわけない」

でも本当にただそれだけだ、Aはそう付け加えて、トッポギに箸を伸ばした。

RM「……A。まだ耳が赤いけど」

「……勘弁してください、ヒョン。僕だって、男なんだから」

そう言ってAはトッポギを咀嚼する。
あまりに何気なく出された言葉に、メンバーは思わず面食らった。

身体は女性なのに、彼女……いや、彼は、自らを“男”だと言い切った。

確かにAが頬を赤らめるのは、いつだって女性を相手にした時だけだ。

Aから溢れる魅力は女性だけでなく、男性をも魅了する。
ゆえに男性から声をかけられることもよくあるが、その時はいつも通り、天使の微笑みを浮かべるだけだ。

……どうやら本当に、心は男らしい。

そう思うメンバーたちだったが、まだ懸念は拭いきれないままだった。