6-2 ページ12
--
「では、入ってください」
秘書の言葉の後、その扉はゆっくりと開かれた。
呼ばれた少女が、顔を伏せながら静かに入って来る。
「ほら、顔を上げて。まずは名前を名乗ってください」
秘書が言うと、少女はゆっくりと顔を上げた。
それと同時に、静寂に包まれたスタジオ内で、ごくりと唾を呑む音が幾つも木霊した。
「本当に……女、なのか？」
審査員の一人が、思わずといった風に声を漏らす。
押し黙る他の面々も、声には出さないものの同じように感じていた。
あまりに美しく、女とも男とも取れない。
綺麗に浮かび上がる顎筋、細い鼻筋。薄い唇。
大きくもなく、小さくもない瞳の奥に宿る、深い色気。
齢１６の少女が持てるものではない。
普通ならもっと丸みを帯びていて、目も円らなはず。
しばし面食らっていたシヒョクは、ふるふると顔を振って気を取り直した。
「は、早く自己紹介をしなさい」
「大阪から来ました。菅野A、１６歳です。
幼い頃から歌や楽器の演奏、作曲を好み、小学生からはダンスに一番励んできました。
特技は即興ダンスです。
……よろしくお願いします」
「……ならば、その即興ダンスとやらを見せて貰おう。だが、曲はこちらが選ぶ。それでいいか？」
「構いません。韓国の音楽は、こちらに来る前に勉強してきました」
「ならば曲は……そうだな『Super Junior』のIt's Youだ」
シヒョクの言葉に、審査員たちはまさかという表情を浮かべた。
なぜならシヒョクの選曲は、即興ダンスには不向きなものだからだ。
サビの４つ打のテンポは特に、即興には少しばかり速い。
だがシヒョクはそれを踏まえた上で、敢えてIt's Youを選んだ。
もしこの曲で審査員を唸らせるようなパフォーマンスが出来ないのであれば、女というリスクは打破できない。
ただ、ビジュアルが良く実力があるだけではダメなのだ。
「大丈夫です」
少女は微塵の躊躇も見せず、そう力強く言った。
瞳の奥に青い炎のような闘志を感じ取ったシヒョクは、目を細め、少女に真剣なまなざしを送る。
「では、曲をかけます。３、２、１……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 502人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
