7. ミンソク ページ16
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無事、BigHitエンターテイメントの練習生に合格したA。
女という性別を危惧して、宿舎は空き部屋を与えられた。
いくら心が男とは言え、体が女である以上致し方のないことだ。
チャンスを与えられただけでもありがたいAには不満など一切なかった。
そして、オーディションから数日後。
宿舎に留まり韓国語の勉強に勤しんでいたAの元に、例の秘書と見知らぬ男性が現れた。
「やぁ。元気にしてたかい？」
「こんにちわ。先日は本当にありがとうございました。僕の我儘を聞いてくれて……」
「いいんだよ。結果的に僕のクビは飛ばなかったし、僕の目に狂いはないってことも証明されたんだから」
そう言って笑い声を上げる秘書。
この男がいなければ、今頃Aは韓国で野宿を強いられていたかもしれない。
元々受かるまで日本に帰るつもりなどなかったため、資金は渡韓の分しか持ってきていなかったのだ。
「今日から君に本社の練習室に通ってもらうことになった。で、その前に紹介したい人がいてね」
「君がAくんか……！ 俺はミンソク。君が通っていたスタジオの先生に、今回のオーディションを紹介したのは俺なんだ」
「あなたがミンソクさんですか！ 僕、以前からあなたのダンスが好きで、ずっとYoutubeで見てました。お会いできて嬉しいです」
「そうか、それは光栄だな！」
Aとミンソクが握手を交わす中、コホン、と秘書が咳ばらいを零す。
「で、ミンソクさんに来てもらったのには理由があるんだ。
君は確かに男っぽいけど、性別的には女性だろ。
だから色々とサポートも必要になってくると思って、彼に依頼したんだ。
これからは何かあったら、彼を頼ってくれ」
「そういうことだ。よろしくな、A」
***
宿舎でミンソクと別れ、Aは秘書と一緒に本社へと移動した。
オーディションの時は、緊張と不安で眺める余裕もなかった本社だが、こうして改めて見てみると、想像よりもこじんまりとして見える。
大手事務所のSMやYGと比べ、まだ駆け出しの事務所ということだから当然だろう。
だがそれでも、この場所がAにとってのスタートラインになる。
高揚と緊張が押し寄せた。
「まずは練習生を紹介するから、僕についてきて」
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作者名：グミカン | 作成日時：2019年10月14日 2時
