5話 ページ5
〜アルバート〜
それから毎日通った
どれだけ忙しくても閉店時間に間に合うように終わらせては、Aさんを待って誘った
借りはもう返したのだから来ないでくれ、とでも言いたいのを我慢しては私から目を逸らした
アルバート｢今日はどこに行こうか｣
｢アルバート様。私は……｣
アルバート｢その呼び方も堅苦しいな。気軽にアルとでも呼んでくれないかい｣
｢無理です｣
アルバート｢はは。即答か｣
｢ご用件はそれだけですか？｣
アルバート｢いいや。Aさんと食事に行きたくてね｣
｢アルバート様！！私は生まれも育ちも平民です。そんな私にアルバート様のようなお方が良くして頂く理由はございません｣
まるで距離を取ろうとするような、わざとらしい喋り方
線を引いた
私達の間にあるのは身分という越えられない壁があると
アルバート｢それは僕とは友人にはなれない。そういう捉え方でいいのかな｣
｢元より友人ではございません｣
アルバート｢そう……。それは……悪かったね｣
この店に来る女性客は皆、私に近づこうと安易な策を練る
それは貴族令嬢も同じ
Aさんだって私を褒めてくれた
男して見てくれると言ってくれたのに……
公園のベンチで頭を冷やしていると、複数の男に襲われている女性と目が合った
抵抗した際に殴られた痕がハッキリと表れている
アルバート｢か弱女性に何をしている｣
ナイフを持っている男を最初に片付けて、後は軽く捻ると捨て台詞を吐きながら逃げて行った
アルバート｢大丈夫ですかAさん｣
｢は、はい。助けてくれて……ありがとうございます｣
アルバート｢Aさん。こんなときにまで気丈に振る舞わなくていいんだよ｣
安心させるように抱きしめると弱ったAさんは泣き出した
ここでキスの一つでもするのは卑怯だな
アルバート｢ごめんねAさん。僕が無理にでも一緒に帰ろうと言えばこんな事にはならなかったのに｣
私の
嫁入り前の顔に傷をつけてしまうなんて
アルバート｢今日はもう遅い。家まで送るよ｣
｢いえ……そこまでご迷惑をおかけするわけには｣
アルバート｢Aさん。お願いだから心配させて欲しい。僕は友人でもなければ、花を買いに来る客だ。でもね。好きな女性は守りたいものだよ｣
体を離して、微笑みながら差し出せば遠慮がちに戸惑いながらも手を取った
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作者名：まゆ
| 作成日時：2021年9月29日 21時
