【アルスマグナ】勝手に親衛隊 短編集

『迷子の迷子の大型犬』 朴ウィト ページ3

「見付けたぁああああ!!!」

3C教室に響き渡る叫び声
五月蝿いったらありゃしない
いつもなら気にせず読書を続けるのだが、今朝聞いたような気がしなくもない声に顔をあげ教室入口に立つ声の主を見る
やはり今朝の彼、朴ウィトだ

先ずは今朝の出来事から話そう
私は教室に向かうべく、長い廊下を歩いていた
曲がり角に差し掛かった時に勢い良く誰かとぶつかった
急いでいたのか走って来た相手とぶつかったので身長が比較的小さい方に部類する私は尻餅をついてしまった

「わわっ！！ごめんなさい！！」

私とぶつかり謝罪したその声の主こそが朴ウィトだ
いつもなら大丈夫だとこっちも謝って退散する所だが、

「僕の教室がどこか知りませんか？！」

涙目で切迫詰まった様子で慌てる様を見るところ迷子らしい
クロノス学園は広すぎるので迷子になる者が多い
1年生は特にだ
背は高いがどこか幼い雰囲気を持つ彼もその1年生なのだろう
取り合えず、彼の教室を聞かなければならない

「何年何組？案内するから教えてくれる？」

今にも泣きそうな彼を宥める様に言えば、彼の顔は一変し、まるで神でも崇める様な顔で

「1年B組、朴ウィトです！！」

と廊下で元気良く自己紹介をしてくれた
というか1Bの教室なら直ぐ目の前にあるではないか
この子はおつむが足りてないのだろうか...と思っていたことは内緒にしておこう
そんなこんなで今朝彼の救世主と化した私は今、何故か迫る様な勢いで

「朝は本当にありがとうございました！！おかげで遅刻せずに済みました！」

と、腰を直角に折りこれまた元気の良すぎる声でお礼の言葉を述べている彼を見ている
こんなに綺麗にお辞儀する子がこのじだいに存在しているとは...

「あ！あと！」

まだ何かあるのだろうか？元気の良すぎるお礼なら恥ずかしいのでもう充分なのだが

「一目見てビビビィッ！と来ました！！これって一目惚れですよね！僕とお付き合いしませんか？！」

ふむ..どうやら私は教室で目の前に立つ大型犬の様な1年B組朴ウィトに告白されているようだ

「聞いてますか？！」

聞こえてるよ大型犬聞こえてる
頼む恥ずかしいから出てってくれ



大型犬な彼に追いかけ回される日々が待ち受けているのも悪くはないかも

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