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ーー
からん、ころん。
下駄の音が響く。
『人いっぱい……』
からん、ころん。
笛と太鼓の音をかき消してしまいそうなほど、祭りは賑わっていた。
《着いたよ》
そう送ると、ごめん、もう少しかかるから鳥居の下で待ってて、なんて返事が帰ってくる。
『……恥ずかしいんだけどな』
久しぶりに腕を通した浴衣を見つめる。
……幸村君、まだかな。
「……そこのお嬢さん、俺と遊ばない?」
後ろからそんな声が聞こえた。振り向くと幸村君が立っている。
『……幸村君、なにしてるの』
「あはは、面白いかなって」
幸村君はくすくす笑って私の格好を見た。
「浴衣、似合うね」
『……まあ』
そんな風に褒めてくれる幸村君も浴衣だった。じっと見ていると、母さんが着ていけってさ、と苦笑いを浮かべる。
「さて、行こうか。」
幸村君は私の手を取った。
「迷子のAさん、なんて言われないように、ね?」
幸村君はそう笑って私の手を引く。
「後ろにくっついてきたら人には流されないから、ちゃんと着いてくるんだよ。」
幸村君の言う通りにすると、本当に全然人にぶつからない。
「それと、どこか行きたいとこある?」
『え、あ、……りんごあめ、たべたい』
大きい背中に見とれていたらそんなことを言われて、咄嗟にそう答えた。
「分かった。行こうか。」
ぼんやり光る提灯と、人の波の中を歩いていく。
まるで魔法がかかっているみたいにその景色が綺麗で、人混みは苦手なはずなのにすごくわくわくした。
ーー
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向日葵 - 男女逆転なら男が姫役で女が王子役なんじゃないの?女が姫役、男が王子役だと男女逆転にならない気がするんだけど.... (2月23日 12時) (レス) @page10 id: 14452fdad1 (このIDを非表示/違反報告)
有山(プロフ) - のんさん» ぎゃー!返信遅くなり申し訳ないです…!コメントありがとうございます…( ; ; )幸村君が好きな子の表情が好きすぎて意地悪しちゃうのいいな!っていうただの偏見妄想小説でして…褒めていただき光栄…( ; ; )更新頑張ります〜!ありがとうございます! (2020年10月10日 22時) (レス) id: ffc96dd0b4 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 毎日更新お疲れ様です。こちらの幸村くんがとてもとても好きでコメントしたくなったので失礼します……!本当に好みの作品で毎朝幸せを貰っています。絵もお上手で羨ましい限りです……!これからも無理はしない程度に更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年10月9日 8時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有山 | 作成日時:2020年9月30日 15時