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ーー
『……うう』
じりじりと鉄板みたいに熱いアスファルトの上を歩く。
今日は朝から最悪だ。起きたら11時だし、ご飯食べてたら舌をやけどするし。
『……おまけにおつかいまで……』
無理やり持たされたエコバッグを睨みつける。
こんな暑い日に出かけるなんて。貰ったお金余計に使ってやる。
なんて、ささやかな反抗を考えながら首筋を伝う汗の気持ち悪い感覚に唸っていると、
「あれ、A」
制服姿の幸村君が目の前から来た。ラケットバッグを背負っていて、夏の熱い風に混じって彼のものなのであろう花の匂いが香る。
「奇遇だね。おつかい?」
『そんなとこ。幸村君は?』
「部活。赤也達の様子を見てきてね。」
部活の割には全然汗をかいてないのが不思議だ。
じゃあこれで、というつもりですれ違おうとすると、幸村君は私の隣を着いてきた。
『…なに』
「荷物もってあげようかなって」
『持ってくれても何にもないよ?』
そういうつもりじゃないんだけど、と幸村君は言った。
しばらくしてスーパーに着いた。幸村君はカゴを持ってくれて必要なものをぽいぽいと入れていくだけの簡単な作業だ。
「今日のAの晩ご飯は……カレーかな」
なんて幸村君が隣で言う。
『今日は私が作るけどカレーじゃないよ』
そう言うと、幸村君は心底意外そうに、料理できるんだ、なんて言ってきたからデコピンを食らわせた。
『…ありがと、持ってくれて。』
「んーん、いいんだよ」
2人で半分こしたアイスを食べながらアスファルトを歩く。
じわじわと蝉の声がまだうるさい。
「……ねぇ」
幸村君が食べ終えたアイスの殻を小さく畳みながら私に話しかけてきた。
「夏休みの宿題、終わった?」
『……あとちょっと』
「俺も。」
また沈黙が流れる。
「……夏休みの、最終日さ、空いてる?」
次は幸村くんはそんなことを聞き出した。
夏休みの最終日は夏祭りだ。
『夏祭りの日?あいてる、かな』
「……そっか、俺も空けてる」
空けてる?よく分からない言葉遣いに首を傾げる。家まであと少しだ。
「……誰か、誘ってくれないかなって」
幸村君の顔を見たいけど、空が眩しくて見えない。
「……いつも俺にからかわれてる、誰かさん」
どきり、と心臓が跳ねた。
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向日葵 - 男女逆転なら男が姫役で女が王子役なんじゃないの?女が姫役、男が王子役だと男女逆転にならない気がするんだけど.... (2月23日 12時) (レス) @page10 id: 14452fdad1 (このIDを非表示/違反報告)
有山(プロフ) - のんさん» ぎゃー!返信遅くなり申し訳ないです…!コメントありがとうございます…( ; ; )幸村君が好きな子の表情が好きすぎて意地悪しちゃうのいいな!っていうただの偏見妄想小説でして…褒めていただき光栄…( ; ; )更新頑張ります〜!ありがとうございます! (2020年10月10日 22時) (レス) id: ffc96dd0b4 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 毎日更新お疲れ様です。こちらの幸村くんがとてもとても好きでコメントしたくなったので失礼します……!本当に好みの作品で毎朝幸せを貰っています。絵もお上手で羨ましい限りです……!これからも無理はしない程度に更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年10月9日 8時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有山 | 作成日時:2020年9月30日 15時