隣の幸村君。【幸村精市】

3限目 ページ5

ーー

今日は何を話そうか、なんて思考をめぐらせる。

「何か変わったことあった？」

『……別に、行事もないし』

「違うよ、君に、何か変わったことあった？って話。」

幸村君は私の事ばかり聞きたがる。からかうネタにでも使うつもりなのだろうか。

『……幸村君には関係ないじゃん』

「そっかぁ、残念。」

くすくす笑う彼から目を逸らして窓の外を見る。
もうすぐ夏が来るようで、私の好きなピンク色たちはもうどこかに行ってしまっていた。

……夏、なつ、か。


「……一関さん、ちょっと」

ふと、そう幸村君から声をかけられる、振り向くと、すごく近くに幸村君がいた。

『な、何？！』

そう言って離れようとすると肩を掴まれる。

「……目、つぶって」

何、なになになに！？
近い上になんだか、キスされちゃいそうなセリフを言われてドキドキする。

『……や、あの』

すごく戸惑って、迷った後、目を閉じる。

……な、何も無い！？

そう思って目を開けるか開けまいか戸惑っているとくすくすと笑い声。

「……はい、ゴミついてたよ。……キスされるとでも思った？」

ニヤニヤと笑う幸村君に、顔が熱くなるのを感じた。

「期待してたの？」

『し、してな』

「してたんだ」

『してない！！』

もう帰る！と鞄を引っ掛けて帰ろうとすると腕を掴まれる。

『……〜っ、まだ何か用！？』

そう振り向くと、

「俺は君としたいな、キス」

なんて、幸村君が笑っていて。

『っ、からかうのもいい加減にしてよ！ばいばい！！』

また今日も、逃げるみたいにして病室を出た。

ようやく忘れたと思っていたのに、スカートのポケットに突っ込んでいたちょっと潰れてしまったマシュマロを家に帰りついて見つけてしまって、すごく恥ずかしくなった。

4限目→←2限目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す