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28限目 ページ40

ーー


ちりん、ちりーん、と、風鈴が鳴っている。


夏休みもあと少しになってしまった。夜の虫の声を聞きながらベッドに寝転ぶ。
そのとき、ぴこん、と携帯がなった。


[起きてる?]


メッセージが送られてくる。送り主は幸村くんだった。


《なに?》


そう、返信するとしばらくしてまたぴこん、と携帯から音が鳴る。


[起きてるかなーって思った]


時計をちらりと見る。まだ時計は20時を過ぎたくらいだ。

《起きてるよ、それで何?》


[なんもない]


《なんもないなら送らないでよ、別にいいけど》


そう返信したところで幸村君から猫のスタンプが送られてきた。ごめんね、ありがとうというスタンプで、幸村君こんなの使うんだ、なんて思ってしまう。


[外見てよ、星が綺麗だよ]


ぽん、と写真が送られてくる。確かに都会にしては今日は星空が綺麗らしかった。
私もベランダに出て星空を撮る。カメラで撮ったのを携帯に入れれば月も綺麗に撮れるから、わざわざカメラを引っ張り出して。


《月も綺麗》


そう、写真を送ると電話がかかってきた。着信音にドキドキしながら電話に出る。



「……ごめんね、突然電話かけて。」


『なに?ほんとに唐突なんだけど』


「さっきの返信、そういうこと?」


『は?』


さっきの返信?意味がわからずに首を傾げていると幸村君はふふ、と笑ってからこう言う。


「月が綺麗ですねってことかと思っちゃった」


月が綺麗ですね、の意味なんて私でも知ってる。


『……な、ち、違うから!月が綺麗だなって思ったの!普通に!』


「そっか〜、俺は死んでもいいよ」


電話口から聞こえる余裕そうな声にどんどん顔が熱くなる。


『……っ、う〜、もういい!おやすみ!』


電話を切ろうとすると、あ、待ってと幸村君が私を引き止めた。


「おやすみ、A」


『……おやすみ』


ぴっ、と通話を切る。


ぽすん、とベッドに飛び込んだ。
まだドキドキが止まらない。


幸村君は私の友達なんだ。今ドキドキしてるのはさっきお風呂に入ってるからなんだ、なんて言い訳をする。


『……おやすみ、かぁ』


はじめて家族以外の人と言ったかも、なんて目を閉じる。


その日はすごくぐっすり眠れてしまって、なんだか幸村君に寝かされたみたいでちょっと悔しかった。

ーー

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向日葵 - 男女逆転なら男が姫役で女が王子役なんじゃないの?女が姫役、男が王子役だと男女逆転にならない気がするんだけど.... (2月23日 12時) (レス) @page10 id: 14452fdad1 (このIDを非表示/違反報告)
有山(プロフ) - のんさん» ぎゃー!返信遅くなり申し訳ないです…!コメントありがとうございます…( ; ; )幸村君が好きな子の表情が好きすぎて意地悪しちゃうのいいな!っていうただの偏見妄想小説でして…褒めていただき光栄…( ; ; )更新頑張ります〜!ありがとうございます! (2020年10月10日 22時) (レス) id: ffc96dd0b4 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 毎日更新お疲れ様です。こちらの幸村くんがとてもとても好きでコメントしたくなったので失礼します……!本当に好みの作品で毎朝幸せを貰っています。絵もお上手で羨ましい限りです……!これからも無理はしない程度に更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年10月9日 8時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有山 | 作成日時:2020年9月30日 15時

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