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24限目 ページ35

ーー

ぴん、ぽーん

蝉の声と、チャイムの音で目が覚める。


『……じゅうじ』


デジタル時計は10時を示していて、キッチンにはチンして食べて、とおにぎりが置いてあった。


ぴん、ぽーん


またチャイムがなる。


『はーい……』


半分寝ぼけ眼でドアを開ける。


「おはよ、A」


『……んぇ?』


「おはよ」


幸村君がいた。心底優しい口調で私に挨拶をしている。そして私の格好はパジャマだ。
ばんっ、とドアを閉めてドア越しに叫ぶ。


『ゆ、幸村君!来るなら来るって言ってよ!!』


「言われなかったから……っていうか、今起きたの?ねぼすけさんだね」


『うるさい!着替えるから待ってて!』


ばたばたとクローゼットから適当な服を引っ張り出して、また玄関を開ける。


『……なに』


幸村君は先程と同じ笑顔で立っている。


「いや、せっかくだからさ、ちょっと遠出しないかなって」


幸村君は自転車を指さした。


『私自転車持ってない』


「だから……2人乗りで」


幸村君ってそういうことするんだ、なんて言おうと思ったけど諦めた。


『分かった、暑いから涼しいとこがいいな』


そう言いながら後ろに座ると幸村君は振り向いて


「もちろん、そのつもりだよ」


と、自転車のペダルを漕ぎ出した。


『わ』


2人乗りなんて初めてだから思わず幸村君の腰を抱きしめる。


「ふふ、しっかり捕まってないと落ちちゃうよ」


夏の香りと蝉の声と、暑さをちょっぴり癒してくれる自転車の風。
心臓のドキドキがわくわくで止まらない。


『幸村君、幸村君』



「なに?A」



『2人乗り楽しい!』


「たまにはいいでしょ?」


『……おまわりさんにみつからないようにね?』


もちろん、と幸村君はちょっとだけスピードを上げる。


夏休み前に買った白いヒール入りのパンプスと、流れていく景色を見つめながら、夏が始まるのを感じていた。


ーー

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向日葵 - 男女逆転なら男が姫役で女が王子役なんじゃないの?女が姫役、男が王子役だと男女逆転にならない気がするんだけど.... (2月23日 12時) (レス) @page10 id: 14452fdad1 (このIDを非表示/違反報告)
有山(プロフ) - のんさん» ぎゃー!返信遅くなり申し訳ないです…!コメントありがとうございます…( ; ; )幸村君が好きな子の表情が好きすぎて意地悪しちゃうのいいな!っていうただの偏見妄想小説でして…褒めていただき光栄…( ; ; )更新頑張ります〜!ありがとうございます! (2020年10月10日 22時) (レス) id: ffc96dd0b4 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 毎日更新お疲れ様です。こちらの幸村くんがとてもとても好きでコメントしたくなったので失礼します……!本当に好みの作品で毎朝幸せを貰っています。絵もお上手で羨ましい限りです……!これからも無理はしない程度に更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年10月9日 8時) (レス) id: d9f3c28035 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有山 | 作成日時:2020年9月30日 15時

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