第五十五話(yu-kun ページ10
「いらっしゃい! A、夾!」
どちらとも許可が出たので約束通り、私は夾を連れて蜜柑の家に泊まりに来た…が。
「み、蜜柑…!? どうしたのその格好…!」
蜜柑「へ? 何が?」
夾「…服」
キャミソールに短パンという格好で私達を出迎えてきた。
蜜柑「えーと…なんかおかしかったか?」
「だ、ダメだよ! 上に何か着ないと…変な人に攫われたり…!」
蜜柑「そうかあ? うちの村ん人らはそんな事する人おらんと思うけどな〜」
確かにこの村の人達は優しい、でもそれとこれとは話は別だ。
夾「…蜜柑さんも女の子なんだから、そういうことには気をつけておいた方がいいと思うよ。村の人だけってわけではないだろうし」
蜜柑「な、なんや。年下やのに謎の年上感が…」
「とにかく着替えよう!」
蜜柑「お、おん…」
夾は茶の間でおじいさんと待ってもらい私達は蜜柑の部屋に行った。
「これ、蜜柑にあげようと思って持ってきたの」
そう言って私はバッグからワンピースを出し差し出す。
蜜柑「わ…可愛い服…」
「前まで着てたからお下がりって形になっちゃうけど…。胸元のミカンのコサージュが蜜柑に合ってるなと思って」
蜜柑「これ、本当にうちが貰ってもええの…?」
「もちろん」
蜜柑はぷるぷると手を震わせながら服を受け取る。
蜜柑「っありがとう! A!」
服を抱きしめ笑顔を私に向けた。
「うんっ。ほら、着てみて」
私がそう促すと蜜柑はワンピースに袖を通す。
蜜柑「ファっ…ファスナーに手が、届かないっ…」
蜜柑は膝から崩れ落ちさながら悲劇のヒロインのような体制になった。
「な、泣かないで蜜柑…ファスナーは私が上げるよ」
蜜柑「しくしくしくしく…うぅ、おおきに…」
オヨヨヨと言いながら蜜柑は白いハンカチで涙を拭う。
「…はい、出来た。鏡の前に立ってみて」
蜜柑「う、うん…。……わぁ」
先程のキャミソール姿とは打って変わって、清楚な少女風になった。
「髪、下ろして三つ編みにしよう。私するからじっとしてて」
蜜柑「はい! お姉ちゃん!」
「いつの間にか妹ができた」
笑い混じりに蜜柑の髪をとかした。
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