第六十四話(みかぜ ページ19
それからしばらくして、蜜柑は完璧に踊れるようになり、コンテストの時期が近付き衣装を選ぶことになった。
「...ねえ、蛍ちゃん。これ本当に着るの?」
「いいじゃない。似合ってるわよ」
「似合っとるでA!」
二人とも笑いながら私に話しかける
「ううん...少し恥ずかしいな...」
「恥ずかしがることはないわよ。私たちだって同じ衣装なんだから」
「そ…そうだよね!蛍ちゃんのお食事券のためにもがんばらなきゃ、だもんね!」
「呼び方、戻ってるわよ」
「あ…ごめん、蛍」
「ふふ、いいわよ」
少し笑いながら蛍はそう言った。
その姿がとても輝いていて、少し見とれてしまった。
「なあなあ、A」
「なぁに、蜜柑」
「蛍がきてから、もっともーっと楽しくなったな!前よりAが笑うようになってうち嬉しい!」
「そ、そんなに笑ってる…かな…」
「うちはAがたくさん笑ってるの見ると嬉しいなぁ、あったかいなぁってなるよ!」
「えへへ…」
思わず顔が緩む。
こんなに幸せでいいのかなと悩むほどに幸せだ
…棗くんやルカは元気かな。元気だといいな
葵ちゃんは今頃何してるんだろう。
お友達とか、たくさん出来たのかな
私のこと忘れてないといいなぁ
「…会いたいな」
まあ、会えるはずもないんだけど
「…誰に会いたいの?」
「わっ!!」
後ろから出てきた蛍に突然声をかけられる。
私はそれにびっくりして思わず跳ね上がってしまった
「び、びっくりした…」
「あら、ごめんなさい。」
本当にごめんと思っているのか分からない微妙な顔をして蛍は私にそう言った。別に大丈夫だよ、と私は言って蛍に笑いかけた
「えっと…」
「答え、教えてくれないの?」
そう言った蛍に私は思わずドキッとした
教える、教えないの話とかじゃなくて…単純に話したくないのだ
あの頃を思い出すという理由ももちろんある。
でも、それ以外に私はこの思い出を自分の中で大事にしたい
誰かに話したりすることなく自分の中でこの記憶は綺麗なままでいて欲しいという願いがあるから
「…ごめんね」
蛍に謝った。けれど蛍は気にすることじゃないと言わんばかりに首を振った。今はその気遣いがありがたかった
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←第六十三話(みかぜ
65人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ