フリーホラゲー好きによる自己満足短編集

被虐のノエル　カロン　リク ページ33

悪魔との契約は、一般的に禁忌とされている。

が。

それがどうした。
だいたい人間とは、欲深い生き物なのだ。

目の前に欲を満たす方法があるのに、それを使わないなんて手はない。
駄目と言われたって、できないわけではないのだから。

本当にしてはいけないのなら、できないような環境を作るべきだ。





「と、演説を終えたところで――」


ゆらりと、目の前の黒いそれに目を向ける。


「――お腹、空いたの」

「…………そんなことで私を呼んだのか……」


カロンと名乗る、私が召喚した悪魔は、そう言ってうなだれた。



親に捨てられ、寝る場所も食べるものも頼る人もいない私は、
生きるために、もはや悪魔を頼るしかなかった。

幸い、大悪魔の召喚方法なら知っている。

だからこの屋上で召喚し、その悪魔に、
衣食住の整った生活を恵んでもらおうと思っていた。

しかし、思った通りに行かないのが人生というか、なんというか。


私は彼の発言に、恵んでもらう立場だということも忘れ、むくれた。
そして偉そうに、言い放った。


「……″そんなこと″？空腹は死活問題よ、馬鹿にしないで」


と、口に出してから気づく。

――下手なこと言ったら、機嫌損ねて契約してくれないかも。


しかし、後悔先に立たず。
言ってしまったものはしょうがない。

いっそすがすがしい気持ちで、私は願いを言った。


「私の願いは一つ。衣食住の整った部屋で誰かと暮らしたいの」

「……」


何か言いたげな視線をぶつけるカロンの眼を見つめ返す。

契約してくれないならそれでもいい。
その時は、このまま死んで終わりだ。

どうせ代償で何かしら失う羽目になるのだし、
どちらでも構わないといった感じだ。


「……誰か、というのは？」

「えっ、と、こうやって話したり、一緒に何かしてくれたりする生き物……？」

「こちらに聞かれても困る」


彼の口から出た質問に、あやふやな要望を伝える。


「人……じゃなくてもいいけど、なんか、誰かと一緒にいたいのよ。
ぬくもりが欲しいというか」


後で思ったが、この時私は親代わりが欲しかったのだと思う。

そんな年相応のかわいらしい私の願いを前に、
カロンは何とも冷酷な判断をした。


「そうか……断る」

〃→←字数が足りなかったので(雑談)

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