徒花の館 冬樹 リク ページ38
「ごめんなさい……あたまわるくて、ごめんなさい。
ゆるしてください……」
そう言って震える少年を、私は抱きしめた。
彼は悪くない。
なにも、悪いことをしていない。
悪いのはあいつらだ。
無責任な周りの人間だ。
それなのにどうして、彼ばかり責められるのだろう。
「大丈夫、大丈夫だから……」
気休めだとわかっていても、そうやって背中をたたくことしか、
私にはできなかった。
彼のいいところを挙げて、笑顔でそばにいることしかできなかった。
なんて無力なんだろう。
どうにかしてあげたいのに、自分のことで精いっぱいで。
私はそんな自分が、嫌いだった。
私はこの世に誕生してから、常に周りから強く当たられた。
生まれた場所が悪かったのだろう。
といっても、まだ使い道のある私はましな方。
知能に障害を持って生まれた東乃は、何をやらせても失敗した。
だから、私よりも酷い扱いを受けてきた。
東乃の方が酷いが、同じ環境で育った私たちが
互いに寄り添うようになったのは必然的だった。
支えて、励ましあって、たとえ死にたいと思っても、
私はそのたびに東乃のことを思い出してとどまった。
東乃には、私がいないとダメだから。
その思いが、果たして純粋な心配だったのか、
見下すような哀れみだったのか。
それは自分でもよくわからない。
ただ、東乃の傍にいると、とても安心して、何かが満たされた。
東乃は最近、自分の頭の悪さから自己嫌悪に陥るようになった。
それを必死に励まし、フォローするのが私の日常。
己を貶す東乃を前に言葉を紡ぐ私は、
いい子ぶってる偽善者みたいな気がして吐き気がする。
それでも、そうしないと東乃が壊れてしまいそうな気がして怖かった。
本当に壊れるのはどっちだったのか、今はもうわからないけど。
そのころ、使い勝手のいい私を、別の場所へ移そうという話が出ていた。
どうやら、とある金持ちの男が幼い女子を欲しているらしい。
私がいなくなって、東乃は大丈夫だろうか。
そんなある日、私は悪魔という存在を知った。
それは願いを叶えてくれる存在。
早速私は、悪魔に願いを叶えてもらった。
魂を奪われたって、何を奪われたっていい。
「東乃を――」
普通の人と同じ頭にしてあげて。
そう言おうと思ったのに、私は全く別の願いを口走っていた。
「私から奪わないで」
東乃に対して私が抱いていたのは、心配でも哀れみでもなく、依存だった。
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瑠衣華(プロフ) - 幽輝＆華さん» ありがとうございます。誤字は普通に私のミスです、すみません。面白いといっていただけて光栄です。これからも作品作り頑張ります！ (2019年1月4日 21時) (
レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣華(プロフ) - クロノスタシスさん» コメント見落としていました、すみません。共感してもらえて嬉しいです！「実は生きてたりせんかなぁ……？」ってずっと思ってます (2019年1月4日 21時) (レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
幽輝＆華(プロフ) - 被虐のノエルのオスカーさんのやつ、＜ジーノ管理官＞が＜ジーの管理官＞になってますよ？わざとだったら、すみません！！あと、ものすっごく面白かったです！これからも、頑張ってください！！ (2019年1月1日 1時) (レス) id: 0b112b624e (このIDを非表示/違反報告)
クロノスタシス(プロフ) - 吐きそうな程にアリスさん好きなんは分かる。キミガシネの2章前編ラストは分岐で、レコが死ぬかアリスが死ぬかだったかと……それ見てたワイ「どっちも死ぬなよォォォォ！」でした。ハイ (2018年9月16日 23時) (レス) id: 7e91a010ff (このIDを非表示/違反報告)
瑠衣華(プロフ) - 雪さん» 共感してもらえてありがたいです。やっぱりショックですよね……。ホラゲキャラは本当に、みんな天使だしかっこいいし可愛いし、人生の癒しって感じです。 (2018年9月16日 21時) (レス) id: 9adbf105ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑠衣華 | 作成日時：2018年4月14日 21時
