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彼は一切後ろを振り返らない。
ほんとに着いてきてよかったのだろうか。
1番奥の本棚に着くと、彼は立ち止まる。
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そこには、スペイン語の本が並んであった。
らいか「え、ありがとうございます。」
びっくりした。
まさか彼が探してくれたなんて。
とても嬉しかった。
隣の人「スペイン語、僕も少し出来ます。」
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彼が喋った。
何も話しかけてないのに。
びっくりした。
でも、やっぱり、嬉しかった。
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らいか「大学で第二外国語として取ったんですけど、全然出来なくて。今日のレポートも、ずっと溜めてたものなんです。………ってあ!よかったら、教えていただけませんか?」
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彼は何も返事をしない。
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らいか「む、無理ですよね。ここ、人多いし。」
何故だろう。
彼のこと、何も知らないのに、彼が黙った理由が分かった気がした。
教えることはできるけど、きっと嫌なんだろう。
そう思った。
らいか「あの、場所、教えてくれてありがとうございました。」
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1冊の本を手に取り、私は席に戻ろうとする。
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彼は戻ろうとしない。
私は立ちどまり、後ろを振り返った。
腕時計で時間を確認しているようだ。
もしかして、もう帰る時間…?
時刻は15時。
今日は予定があるのだろうか。
そんなことを考えていたら、彼の口が動いた。
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隣の人「17時。」
らいか「え、いや今は…」
言いかけた時に彼の言葉が遮る。
隣の人「スペイン語教えてあげる。」
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信じられなかった。
私に教えるのは嫌だと思っていた。
というか、私自体嫌われているだろう。
そう思っていた。
初めて会った時の迷惑そうな顔がそれを証明していた。
…………はずだった。私の中では。
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お礼を言う間もなく、彼は席へ戻る。
慌てて私も着いていく。
彼に追いつくと横に並んで席へ戻る。
ありがとう。
言いたかったけど、何故か言えなかった。
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作者名:らいか | 作者ホームページ:http://raika
作成日時:2019年6月3日 18時