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side R.Y
「おはよ山田、早いね。…………山田?」
「あぁごめん、おはよう伊野尾ちゃん。」
どうしたのー?って、首をかしげながら伊野尾ちゃんが俺の隣に座る。
大ちゃんに冷たくされたあの日から、メンバーでいる時は俺の隣が伊野尾ちゃんの定位置になってた。
今日は集合時間よりも早く着いてしまったから大ちゃんと伊野尾ちゃんのことをぼんやりと考えていた。
あの日、大ちゃんがあんなことを言った原因は……多分、俺だと思うし。
「伊野尾ちゃん、最近どう?」
「どうって?」
「……大ちゃんのことだよ。ショックでご飯抜いたりとか夜眠れてなかったりとか、大丈夫?」
「なにそれ、おれそんなに弱くないんですけど〜。」
ぼふん、とソファの背もたれに全体重をのせて天井を仰ぐ伊野尾ちゃん。
その横顔は、本当に落ち込んだりへこんだりしているようじゃなかった。
「なんかね、もう慣れてるっていうか。10年間もずーっと片想いしてたから、叶わないんじゃないかなーってなんとなく思ってたし。」
「そうなの?」
「うん。逆に不安がなくなった分、ちょっと楽になったのかもしれない。」
伊野尾ちゃんって、強がるのが本当に得意だなぁと思う。
表情はなにも変わってないのに、もともと白い手の指が真っ白になるほどきつく服の裾を握ってた。
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作者名:鎖空 | 作成日時:2017年12月10日 20時