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あの夜、愛している君の家を出た。
決して愛想を尽かしたのでも無いし、別の誰かを愛しているのでも無い。
ただ、君の仕事が波に乗って来て、比例して溜まる疲れを俺は取り除くことが出来なかった。
逆にそれごと守ってもやれなかった。
それが恐らく原因だったのだ、君は俺をうざがるようになって、距離を置いてもそれが変わることは無かった。
きっと君には俺以外の誰かが似合う。
俺には出来なかったが、幸せにしてくれる人が現れる。
そう信じて、大好きな彼女と何年にも渡って過ごしてきたこの家を出る支度をした。
最初は服など最低限のものだけ持ち帰ると決めていたが、洗面所に行ってみれば
君がプレゼントしてくれたスポーツタオル、
磨きやすいと1度言っただけで、買う時は同じものを買ってきてくれた歯ブラシ、
家だけの姿が特別で何だか嬉しいと言っていた眼鏡が思い出と共に目に飛び込んだ。
その瞬間目から涙が溢れ出した。
こんなにも君に溺れていたなんて知らなかった。
嫌われてしまう前に気づきたかった。
首に手を当てれば俺が君を求めた時を思い出してまた涙を抑えられなくなった。
明日は休もう、こんな情けない姿CEOとしてみっともない。
詰まった鼻の所為で電話越しに聞き取れるか不安だったが今は仕方ない。
福良さんに電話を掛ければ、信頼している彼は心配してくれたし、承諾もしてくれた。
その上俺がいない分の撮影まで進めてくれるらしい。
ただ、洗面所に蹲って嗚咽を漏らした。
そこにいても仕方ない、と最後の荷物を取りに寝室へ向かうと2人で寝るからと買った大きなベットが目に入った。
もう普段からは想像もつかないあどけない姿で眠る君の姿は見られないと思うとまた涙が止まらなくなった。
あの時もっと、ちゃんと、俺を見てくれればなんて言わなければ愛想尽かさなかったかな。
もっと、ちゃんと、俺を見てくれればなんてその言葉が君には重かったかな。
何を反省したって君は俺を好いてくれない。
最後、この家を存分に目に焼き付けてから、
愛していた君とのペアリングと謝罪の伝言を机に置いて家を出た。
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あり(プロフ) - 妖桜さん» ありがとうございます。拙い文章ではありますが、是非今後もご愛読頂ければ幸いです。 (2020年7月31日 7時) (
レス) id: f40a87be7b (このIDを非表示/違反報告)
妖桜(プロフ) - 始めまして。「ちょっと切なめなお話」がちょっとどころじゃないです。( ﾉД`)ｼｸｼｸ…離れて互いに全面的には良くなったのに内面の葛藤、すれ違いが感受出来ました。また気ままにでも作品を投稿してください。(__) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a702a85950 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あり | 作成日時：2020年7月25日 20時
