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頭が真っ白になって何も考えられなくなった。
状況も理解出来ぬまま、ただ床にへたり込み呆然とするばかりだった。
連絡…連絡が来ているかもしれない。
何か用事があって遅れる。という趣旨の伝号だろうと、微かな望みを持ってスマホを開いた。
LINEを開いてみても何も来ておらず、電話を掛けるも応答無し。
それからの記憶は全くなく、気がついたら朝を迎えていた。
あのまま、床に直座りをして横のソファにもたれかかっている状態だった。
取り敢えず、なにかせねばと思い立ち洗面所に向かってみるが着くや否や途端に視界がボヤけ頬に伝った。
彼がお気に入りだと言っていたスポーツタオルも、磨きやすいと言っていた歯ブラシも、
家でのみかける良く似合うメガネも、
綺麗さっぱり無くなっていた。
鏡に映る自分は見るも無残な姿で、哀れだった。
酷い姿で居る訳にもいかず、お風呂にだけは入ろうと最後の体力を振り絞り着替えを持って向かった。
沸かしつつシャワーを浴びていると、彼との思い出がフラッシュバックして涙が止まらなくなった。
お風呂場に響く汚い嗚咽、鼻を啜る音、水が打ち付ける音。
彼が居なくなってこんなにも辛いとは思わなかった。たった数時間しか経っていないのにも関わらず心は既にボロボロだった。
数年に渡り愛してきた彼がたった一晩でどこか宛もわからない場所に消えてしまった。
理由もわからない。
きっと愛想を尽かしてしまったのだろう。
昔からそうだった。
人見知りだった私は甘える事が上手くできず、結局は空回りして自分で自分の首を閉めるだけだった。
そんな私に彼は優しく寄り添ってくれたのだ。
なのに、私はその優しさに甘えるばかりか、忙しいとか、何とか言って彼を踏み躙るようにウザがったのだ。
その挙句に、距離を置いてくれたのにも関わらずこっちを見てくれない。なんて。
最低最悪だった。
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あり(プロフ) - 妖桜さん» ありがとうございます。拙い文章ではありますが、是非今後もご愛読頂ければ幸いです。 (2020年7月31日 7時) (レス) id: f40a87be7b (このIDを非表示/違反報告)
妖桜(プロフ) - 始めまして。「ちょっと切なめなお話」がちょっとどころじゃないです。( ノД`)シクシク…離れて互いに全面的には良くなったのに内面の葛藤、すれ違いが感受出来ました。また気ままにでも作品を投稿してください。(__) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a702a85950 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あり | 作成日時:2020年7月25日 20時