秋桜（by.ROOMS）6 (ページ10)

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「………かすみちゃん、大丈夫だからね？
うちのお兄さんコンビがしっかりニノを受け止めているから、ニノも少ししたら落ち着くはずだから。
元気、出してね？」

コクン、と頷くと「合格」、みたいに「よし、」とアタマを撫でられた。
………こういうとこ、サトシさんに似ている。
2人とも、私を親戚の子どもか何かみたいに思っているのかな、と苦笑してしまう。

「………ふふ。こっちでも心配してる」

相葉さんが、小さく笑って、数歩行く。
煉瓦で舗装された広い歩道の中央部分に作られた、畳一枚分くらいの小さな花壇。
そこで、足を止めると、右腕を伸ばした。

「？」

ポンッ、
相葉さんの背丈の倍くらいある木から、何かが落ちてきて、相葉さんが右手でパシッとキャッチする。

相葉さんは、木を見上げて、幹を叩いたあと、木の方を見たまま何かを言った。
その言葉をうまく聴き取れないまま、じっと相葉さんの方を見ていたら、相葉さんが私のところまで戻って、手を差し出してきた。

相葉さんの手に握られていたのは、小枝。
先にブルーベリーのような形の赤い実がついた枝が数本先分かれして、ブーケのようにまぁるくまとまっている。

「はい」

「え？」

よくわからないまま、目の前に差し出された、そのブーケを受け取る。

「かすみちゃんに。元気出してって、ナナカマドさんが」

「………ナナカマド、さんが？」

得意な顔をして、相葉さんが、さっきの木を指差す。

「うん。ナナカマドさんが。
俺、最近、ちょっと仲良くなったんだよねっ」

「ナナカマドさんと？」

「うん。ナナカマドさんと」

太陽のようにあったかいニコニコ笑顔につられて、思わず声に出して笑ってしまう。
相葉さんは、本当に不思議な力を持つ人。手品のように、次から次へとあの手この手を出して、人を元気にしてくれる。

「可愛い実ですね。
ありがとうございます。
お部屋に飾っておきます」

「あ、お礼は、」
「ナナカマドさんに、ですよね？」

目尻にまだ涙は浮かんでいたけど、笑いながら、ナナカマドさんの方へ向き直ってアタマを下げた。

「ありがとうございます。
ナナカマドさん」

相葉さんが、「うん」と大きく、満足そうに頷いているから、また、笑ってしまう。