秋桜（by.ROOMS）6 (ページ9)

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「………さっきの。
かすみちゃんを傷つけちゃったかもしれないけど………。
俺的には、良かったと思うんだよね。
ニノの気持ちが聞けて。

ほら、ニノって気持ち隠すのチョーうまいから。
やりこめられちゃうの、俺いつも。
だから、あーやって、ニノが弱いトコ見せてくれたのは、すごいことなんだよね」

「………」

「あのまま、ニノを孤独に閉じこもらせちゃうより、ずっと良かった！
って、俺は思っているんだよねっ」

頭上から、相葉さんの言葉が優しく降ってくる。
強張っていた心がほぐされて、じんわりと安心感が広がっていく。

男の人に、抱き締められている、とか、そういう意識しちゃうようなモノは何もなくて。
魔法に、かけられたみたいに。
どこか夢現な空間の中で、相葉さんの声を聞いていた。

転んだ子どもが泣き止むまで母親の腕の中にいるように、
私の涙が引くまで、相葉さんはじっとそのまま待ってくれていた。

しばらくして私の気持ちがすっかり落ち着いた後、
私と相葉の間に、また、スペースが戻ってきて、相葉さんの腕から解放される。
なんだか、気恥ずかしくて、くすぐったくて、俯き加減で相葉さんと向き合った。

「ありがと………ござい、ます」

ずっと口を結んでいたから、スムーズに声が出なくて、つまってしまったけれど。
心から出たお礼の言葉だった。

相葉さんは、一瞬、キョトン、とした後、みるみると口角をあげて満面の笑みを見せた。

「うひゃひゃ、かすみちゃん、ニノとおんなじだぁー」

「？」

「前に、ニノを抱き締めた時、ニノも俺におんなじ顔して言ったんだよねっ、
『ありがと』って」

相葉さんは、眩しい思い出に目を細めるように言う。

……二宮くんがどんな状況で、どんな風に相葉さんに抱き締められたかはわからないけれど。
なんとなく、その時の二宮くんの気持ちは、分かるような気がした。

二宮くんは、その時、相葉さんに温めてもらったんだ。
凍りつきそうな、自分の不安の塊を、溶かしてもらうように。