秋桜（by.ROOMS）6 (ページ8)

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…………

「もう真っ暗、だねー」

外に出て、すぐ、相葉さんが
「うう～ん、」と伸びをしながら言った。
冷たい風が吹き抜けて、靄がかったような私のアタマを凛とさせる。

二宮製薬の敷地外に出たものの、なかなか歩き出そうとしない相葉さん。

私も。
「1人で帰れます」
そう相葉さんへ伝えたいのに、話そうとすると声が震えそうで、何も言えないまま立ち尽くしていた。

車道を、何台か車が行き過ぎて、見るとはなしに、そのテールランプを見送る。

やっぱり、相葉さんに、1人で帰ると伝えよう。そう思って相葉さんを見ると、
すぐ隣に、柔らかい眼差しで私を見つめる相葉さんがいた。

「かすみちゃん」

「は………い」

相葉さんの眼が、真っ直ぐ私に向けられる。
アーモンド型の瞳が輝いて、私の眼をじっと見つめる。私の眼の中に、何かを見つけるかのように。

「………泣いて、いーんだよ？」

「…………」

「たぶん、こういう時は、堪えているより、
思いきって泣いちゃう方がすっきりするよ」

相葉さんの言葉に、何て返したらいいかわからないまま、その眼を見つめ続ける。

笑みを浮かべたまま、トンッ、と大きく1歩分進み、私との間合いを詰める相葉さん。

「あい……」

言い終わらない間に、フワァサッと相葉さんの腕の中に抱き締められる。

外気で冷たくなった相葉さんのパーカーが私の頬をひんやりとさせる。
触れるか触れないかくらいの力で、包み込むように私の背中へ回された腕。

突然のことに、どう対処していいかわからないまま、相葉さんの香りと温もりに包まれる。

思わず深く眼を閉じると、目からぽろっと涙が零れ落ちた。
一粒零れたことを認めると、ぽろぽろぽろっと後から後から涙が追ってくる。

「ニノも、泣いちゃったし。
俺らみんな、泣いちゃったし。
今日はみんなで泣き虫だよね。
………アレ？大ちゃん泣いた？泣いてないよねっ？」

途中、本気で疑問になったらしい相葉さんの焦り具合が可愛いらしくて、涙していたのに笑ってしまう。