秋桜（by.ROOMS）6 (ページ7)

今日:4 hit、昨日:8 hit、合計:72,834 hit

28.7 ページ7

「………わかった。
ここにいる。
和と、いるから」

誰もが茫然と二宮くんを見つめる中、
サトシさんが、きっぱりと、そう言った。

「サトシさん………」

サトシさんが、二宮くんの隣へ進んで、
ポン、と肩を叩いた。

二宮くんが、咽び泣きながら、サトシさんの肩に顔を埋めた。

「高橋ちゃん。ありがとうね。
おいら、イルカ、もアリだと思うんだよね」

んふふ、と笑ってサトシさんが言う。

私はブンブンと頭を振り続けるだけで、
何の言葉も出なくて。
それでも、駄々っ子みたいに頭を振った。

だって、コレは違う。
コレは違うよ、二宮くん！

サトシさんに身体を預ける二宮くんを
視界の隅にぼんやりと移したまま、
私はその場で立ち尽くしていた。

誰も、微動だにせず、
私と、サトシさんに抱き締められた二宮くんを囲んでいた。

ーーーどれくらいの時間が経ったんだろう。

随分、長いこと、立ち尽くした気もするし、
ほんの2、3分の出来事だった感じもする

「………今日は、さ、もう、遅くなっちゃうから。
この件は、また、話そうよ？
俺、来週も来るしさ。ねっ？
この場で、決めちゃえる話しでもないじゃん？

………高橋ちゃん、なんか、慌ただしくなっちゃってごめんね？
来てくれて、ありがとうねっ！
あ、俺、送るよ。
俺、道、覚えたんだよね、たぶん」

私の頭をポンポン、と優しく叩きながら相葉さんが切り出す。
誰にも有無を言わせない勢いで、話し続けて進める相葉さん。
あんまり必死になって、一生懸命、提案してくれるから、私も少しずつ冷静さを取り戻していった。
俯いていた顔をあげ、相葉さんを見上げると、その頬にも涙の通り道ができていた。

「………たぶん、て。相葉くん、
携帯、ちゃんと持っていけよ？」

松本さんも、咳払いしてから、涙でくぐもった声で続いた。

「高橋さん、ありがとう！
………また、遊びに、来てもらえるかな？
みんなで、待っているから」

櫻井さんが、これ以上ないくらい優しい笑みを浮かべて、
いつもの調子のように言ってくれる。
眼に涙がいっぱい溜まり過ぎて、瞬きするのも堪えている。

………なんて、優しい人たちなんだろう。

相葉さんが、優しく肩を抱いてくれて、頷いてくれる。
私は、何も言えないまま、ぺこりと頭を下げて相葉さんに連れ立ってもらい、ログハウスを出た。

涙で滲む螺旋階段を、踏み外さないように、相葉さんが一歩ずつ誘導してくれた。