秋桜（by.ROOMS）6 (ページ5)

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「和は………何も怒ってないよ。
そういうんじゃない」

パソコンを畳んだサトシさんが、ポツリと言った。
相葉さんが、ハッとした表情でサトシさんを見る。

「大ちゃんも、きいたの？」

「「「？」」」

「ニノが………啜り泣く声」

相葉さんが心苦しそうに尋ねた。
サトシさんは、チラリと相葉さんを見た後、その問いには何も答えないままコーヒーに口をつけた。

「俺、聴き間違いかな、っとも思ったんだけど。ニノ、今朝、真っ赤な眼をしていたから………」

沈黙が支配して、ただテーブルを見つめるだけの時間が流れる。
少しでも気を抜くと、ため息が出そうで、注意深く呼吸した。

「何？集まって。
………あ、来てたんだ？」

顔を上げると、ちょうど、二宮くんが帰ってきたところだった。

あまりに突然の二宮くんの登場で
言葉もなく、二宮くんの動向を見つめる。
それは、みんな同じだったようで、二宮さんが怪訝そうな顔でテーブルについているみんなを見渡した。

「何？バケモンでも見る顔して？」

クスリ、と笑って言っているのに、その顔には全然、楽しそうな色が浮かんでいない。

「俺、ちょっと勉強あるから。
今日は、かまってあげられないけど、ゆっくりしていってね？高橋さん」

飄々とした態で、そう言うと、真っ直ぐに階段へ向かおうとする二宮くん。

………まるで、学校にいるときの二宮くんみたいだ。

ドキン、ドキン、と次第に心臓が早鐘を打ってくる。
それを鎮めたくて、右手と左手をギュウッと握り締めて、唾を飲み込む。

「私っ、二宮くんに話しがあって来たのっ！」

辛うじて裏返らなかったものの、場違いに大きな声が出て、自分でもびっくりしてしまう。

階段の一段目に足をかけた二宮くんが、
そのままの姿勢で振り返って私を見た。

「スゲー声。………何？」

顔を顰める演技をした後、薄ら笑いを浮かべて、私の次の言葉を待っている。

「私、昨日、サトシさんと水族館へ行ってきた」

ふぅっ、と長いため息が聴こえた後、二宮くんは、階段へ一歩かけていた足を戻し、私に真っ直ぐに向き直った。

「昨日、聞いた。
………で？」

射抜くように私を見る眼。
逸らしてたまるか、と、私も負けじと見つめ返す。