秋桜（by.ROOMS）6 (ページ38)

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「あっ、あのっ、こんな時間まですみませんでした。今日はもう、帰ります。
あの、櫻井さん。これから、勉強のこと、よろしくお願いします。
あと、サトシさん。サトシさんは、全然、勉強の邪魔なんかじゃないです。
だから………いつも櫻井さんとココにいてください」

申し訳なさ過ぎて、感謝の心もいっぱいで。
伝えたいことで頭がパンクしてしまった私は、自分でも、意味のわからないことを口走ってしまう。
いつも櫻井さんとココにいて、なんて。
結婚控えたカップルに贈る言葉じゃあるまいし………

きょとん、とした顔で私を見ていた櫻井さんとサトシさんが、顔を見合わせた後、笑った。
少し恥ずかしい気もしたけれど、くすぐったさの中に暖かさを感じる。

………広げた問題集やテキストを片付け、カバンに入れながら、帰ってからやることを頭の中で整理していく。

間違えたとこの復習をしたあと、もう一度、
今度は、時間を測って今日やった問題集を解いてみよう。
模擬テストの申込みもしたいし、
スケジュールも組んでみよう。

やることは、いっぱいだけれど、櫻井さんの誠意に応えられるだけの努力をしていきたいと心から思い、決心する。

「送っていくよ」

私が帰り支度を終えたのを見て、櫻井さんがそう言ってくれたけど、私は頭を振った。
最初から、その申し出を受けたら断るつもりでいたから。

「あのっ、コレは塾と同じ扱いとして、送りとかのお気遣いは、ナシでお願いします」

「えっ？でも………」

「8時までに帰るようにするのでっ」

「………じゃあ、そうしようっか」

やっぱり、私の気持ちを汲んでくれる櫻井さんに、感謝を込めて頭を下げた。