秋桜（by.ROOMS）6 (ページ36)

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34.2 ページ36

「『Like dogs her.』ですか………」

「第何文型？」

「3？ですか？」

「………じゃあ訳すと？」

「犬が好きな彼女………
犬みたいな彼女………」

「情報に忠実に見てみて？
第3文型ならSVO。それなら、主語は？」

「Like ………好きなこと？ん？
それだと命令形？だと1単語多い。
4文型にも5文型にも……ならないし」

「動名詞でも不定詞の名詞的用法でもないlikeが主語になるときは？」

「もしかして、名詞でLikeさん？」

「正解。Mr.をつけなかったのは少し意地悪しちゃったね。
herは目的語。
じゃあ、動詞がdogs。三人称できてるよね？dogsを辞書で調べてごらん？」

「………つけ回す」

「ライクさんは彼女をつけ回す、が正解。
Likeもdogもherも、中1で習う簡単な単語だから、そのまま繋げようとしちゃうけど。
自分が意味を知っているっていう思い込みを捨てて、ちゃんと情報を整理する。
そのために、事前準備として、知識を蓄えておく。それが、受験対策ってものかな」

手品の種明かしをしたマジシャンのように、櫻井さんが笑みを携えて私を見据える。
目からウロコ。
櫻井さんの話しは分かりやすく、ストンと頭に入ってくる。

「………私、やっぱり、櫻井さんに教わりたいです。
ご迷惑………じゃなければ」

「そう言ってもらえて光栄です。
高橋さんが来ると、サトシくんが喜ぶから、俺としても、高橋さんが勉強しに来てくれたら嬉しいよ。
とりあえず、しばらく試してみようっか。
週3日でどう？」

「はい、大丈夫です」

家庭教師を快く承諾してくれた櫻井さんのおかげで、トントン拍子に話しが進み、
一気に将来の夢が近付いてきた気がする。

「あの、代金については、両親に訊いてみるので、また改めて調整をお願いします。
………貴重なお時間を頂戴してしまうこと、申し訳ないですが、よろしくお願いします！！」

椅子から立ち上がって、思いきり頭を下げた。
櫻井さんは、一瞬、びっくりした顔をしたあと、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。

「俺たちは、お金より貴重なものを高橋さんからもう既にいただいているけれど………
ちゃんとしておいた方が、もしかして来やすいかな？ココに」

ニッコリ、と笑う櫻井さんは、私がココに来る度に恐縮していることをお見通しだったみたいで。
お金を受け取る、っていう譲歩をしてくれる櫻井さんの心遣いに頭の下がる思いがする。