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…………
一通りの受験教科を参照したあと、櫻井さんが指し示した問題をいくつか解いた。
時々、参考書を開いて確認をしながらも、淡々とまる付けをする櫻井さん。
どの教科にも精通しているらしい櫻井さんの知識と学力に舌を巻いてしまった。
櫻井さんのすごさを改めて実感する。
頭が良くて、面倒見がよくて、冗談も通じて、優しい………しかも、この顔。
櫻井さんがサトシさんや二宮くんに見せるキュートな一面を知らなかったら、完璧過ぎる櫻井さんに気後れしちゃって会話もままならなかっただろうなぁ、と思う。
こうして向かい合っているだけで、手汗ぐっしょりになったりして。
「一気にやって疲れちゃったかな？
少し休もうか」
ひたすら問題を解いただけの私と違って、参考書の解説と照らし合わせて私の問題点をチェックしていた櫻井さんの方が、よっぽど労力を消耗したと思うけれど。
そんな様子を露とも見せずに櫻井さんが微笑んだ。
「少し心配していたんだけど、この分だと間に合いそうだね。受験」
私の前に、カフェラテが入ったカップをコトン、と置いて櫻井さんが言った。
「いただきます」
口に入れたカフェラテは、ちょっぴり甘くて、濃くて、温かくて、ホッとする。
「こう見ると、本当に、高橋さんらしいっていうか………」
ふははは、と笑いながら、私の解いた問題の正誤を見つめる櫻井さん。
「私らしい………平均的ってことですか？」
自虐的なわけではないけれど。
いわゆる偏差値50、が私の立ち位置かなぁ………と思っている。標準偏差を抜きにして。
「いや。堅実だなぁ、と思ったんだ。
基礎は固まっているけど、応用はまだ手を付けていない。
………上乗せしていく知識と、受験のコツがわかれば、うまくいくと思うよ」
「堅実、ですか。私、定期考査時にしか勉強してこなかったから………。
櫻井さんは、どうして、そんなに頭がいいんですか？」
「………え？頭？いいかなぁ……？
まぁ、負けず嫌いだから、時間をかければ解決できることなら、寝る間を惜しんで取り組むかな」
「寝る間を惜しむ………」
「俺の場合はね。高橋さんは、ちゃんと寝た方がいいよ。受験は、長期勝負だから。
あとアドバイスとしては、
試験で大事なのは、与えられた情報を忠実に読み解くことが鍵になるってことかな」
「与えられた情報を忠実に………」
「んー、例えば
『Like dogs her.』 なんて訳す？」
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年8月26日 0時
