秋桜（by.ROOMS）6 (ページ34)

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慣れているだけあって、的確なアドバイスを出しながら、テキパキと動いて準備する様は、本当に職業としている塾講師そのもので。
テーブルの上にカバンから出したテキストや問題集を広げながらも、思わず尻込みしてしまう。

「なんか……翔くん、かっこいー」

私の気持ちを代弁するかのように、サトシさんが呟く。

「えっ？かっ、かっ、かっこいーって、
そんなことないよ///サトシくん」

サトシさんの言葉に呆気なく相好を崩す櫻井さん。
二宮くんが笑いながら、サトシさんを立たせる。

「ほら、サトシ。邪魔しちゃ悪いから、部屋行こうよ？」

二宮くんがサトシさんに紙袋を2つ抱えさせてから、自分の荷物を持った。
そのまま二宮くんに促されて席を立ったサトシさんは、二宮くんに半ば、押されるようにして階段へ向かう。

「え？あれ？和、塾は？」

サトシさんと連れ立つ二宮くんを見て、
慌て問い質す櫻井さん。

待っていましたとでも言わんばかりに、
イタズラな笑みを浮かべた二宮くんが、

「今日は5時からにする」

と言いながら、サトシさんをぐんぐんと押し進める。
呆気にとられて、悲壮な面持ちでそれを見送る櫻井さん。
申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。

「なんか………すみません」

「え？」

………『せっかくサトシさんと2人、和んでいたところを邪魔してしまって』。
その言葉を伝えるのは、あまりに偲びなくて飲み込んだ。

「………邪魔って言うなよ、」

今更ながら、サトシさんが二宮くんに
最後の抗議をしている。
それから「いーから、いーから」と言う二宮くんに諭されて、2階の部屋へと消えていく。

「と、とりあえず、やろっか」

2人の動向を見守った体勢のまま、
シャーペンを逆さまに持った櫻井さんが、芯をだそうとして、ペン先を勢いよくノックして、言葉にならない叫び声をあげた。