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「おぉっ！こっちもいーの？
………あっ！！！」
ガサゴソと紙袋を覗いた後、口を開けて私を見るサトシさん。
「はい。昨日、たまたま目に入って………」
渡したのは、
「自家製酵母で作るパンレシピ30」
というテキストマガジン。
前に私がサトシさんにあげたバケットサンドによく似た写真が表紙に載っていたから、サトシさんにあげたいな、と、昨日、本屋で帰り際に見つけて、迷わず購入したもの。
「スゲェ……ありがとう！
ありがとう！！」
紙袋から中身は出さずに、また、大切そうに、そっと袋を閉じるサトシさん。
その表情は、本当に満ち足りているように思えて、私の方がお礼を伝えたいくらい幸せな気持ちで溢れる。
「何よ？何が入ってんのよ、おじさん」
「んふふ。内緒〜」
たぶん、本気ではないけれど、紙袋を開けて覗こうとする二宮くん。
サトシさんが俊敏な動きでそれを阻止する。
二宮くんは、楽しそうに、逆サイドからまた、覗こうとチャレンジする。
わざと、「ハッ」とした表情を作って隙を作るサトシさん。
その演じ合いに、笑い合う2人。
………それを満面の笑顔で見つめる櫻井さん。
よく知った光景、に、ホッとする。
「それじゃ、私、帰りますね」
サトシさんの笑顔も無事、見れたし。
テーブルに広がったままのクマバッグを畳んでから、かばんに仕舞う。
「え？もう？」
櫻井さんが言う。
「あの、勉強があるんで」
「塾時間？」
「あ、塾は、まだ、その………」
実は。
昨日の櫻井さんからの社交辞令とも取れるお誘いを真に受けているなんて、言えない。
今更、塾名を教えてくださいなんて、訊けない。
口を濁す私を見て、櫻井さんが
「あぁ！」
と声をあげる。
「もしかして、本当に、入塾を考えてくれているの？」
「ハイ………恐れながら」
恐縮しながら言うと、
「時代劇かよ？」
とクスクス笑いながら二宮くんが突っ込んでくる。
「へぇー！嬉しいな。
明日、一緒行く？
あ、俺がバイト入るのは12月からなんだけど。
ん？待てよ？
俺がココで見ようっか？勉強。
あー………不安がなければ、の話」
櫻井さんが腕を組み、顎の下に手をあてて言う。
「え？そんなっ、」
「恐れ多くも、」
「恐れ多く………ちょっ、二宮くん！！」
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作者名：えりんこ
作成日時：2014年8月26日 0時
