秋桜（by.ROOMS）6 (ページ25)

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「………『ちょっと』？
なんか、用事あんの？」

「えっと、………勉強、を」

「勉強？」

「………受験を、しようと思いまして」

思いついたばかりの夢なのに、話しの成り行き上、どんどん人に伝わっていくハメになる。
まぁ、仕方ないんだけど。
有言実行、で、頑張るしか、ないんだけど。

「あー、それでか」

納得した二宮くんがクスクス笑う。

「？」

その笑いの意味が分からなくて、二宮くんを見る。
二宮くんは、まだひかないクスクス笑いを引きずりながら言った。

「今日、休み時間の度に、呼び出しされていたじゃん、サイトウに」

確かに。
朝1番にサイトウ先生に、進路希望を伝えた。
あまりに突然の、国立大教育学部への受験希望に、驚き呆れたサイトウ先生は、進路室から膨大な量の資料を持ち出して調べ始めた。

「1限目の休み時間にも、職員室へ来い」

もちろん、10分程度の休み時間で済む話しじゃなくて。
休み時間の度に次の休み時間も来るように言われたんだけど………
既に約束をしているにも関わらず、休み時間の度に校内放送を使っての呼び出しがあって。
もう、サイトウ先生が私の名前で遊んでいるとしか思えなくて。
休み時間が始まる度に、まずは放送を阻止するために放送室へと全力疾走した。
………願いも虚しく、弄ばれ続けたわけだけど。

「可愛がられているよね、サイトウに」

可愛がる、とは、少し違う気がする。
他の女子より、ハードルが低いんだよ、私は。

「じゃ、俺も。
一回、ちょっと帰るかな」

二宮くんが立ち上がって、紙袋を２つ抱えた。
その腕からずり落ちそうになっている白い紙袋を見て、慌てカバンから出した布バッグは、雑誌についてきたノベルティのトート型バッグ。
………サングラスをかけたファンキーなクマ、の。

「クククッ、コレ、使うの？」

二宮くんの前に、トートの口を広げて差し出すと、二宮くんが笑いながら紙袋を２つ中に入れた。

「////」

てっきり、私が持つんだと思ったトートバッグは、二宮くんの肩にかけられた。
………可愛い。
可愛すぎるくらい、似合っちゃっているよ、二宮くん。

「なに？」

私の顔を見て、眉を寄せる二宮くん。

「バッグ、似合ってる////。
………あげよっか？」

「はぁっ？バーカっ！」

思いっきり照れただろう二宮くんに、手の平で額をポーンと弾かれる。
うわっ、二宮くん耳まで真っ赤。

ビミョーな空気になっちゃった。