秋桜（by.ROOMS）6 (ページ24)

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「何………コレ？」

二宮くんが呟くように訊いてくる。

ーーー昨日の今日、な火曜日。
授業が終わってすぐ、駆け込むように二宮くんの机にいく。
それから、二宮くんの机の上にポン、ポン、と持ってきた紙袋を２つ置いた。
1つはマチがついて膨らんだB5サイズの茶色い紙袋。
もう1つはA４サイズの薄くて白い紙袋。

机の上にのせられたそれらを見て、明らかに面食らった顔の二宮くん。

「………あ、そうだ。
髪、いいんじゃない？
『らしくて』似合っているよ」

その、可愛らしいアヒル口をひっさげて、見上げるように眼を向ける二宮くん。
ズルいと思っちゃうくらい可愛くて………ズルい。
………目線は、まぁ、立ち位置的に、仕方ないんだけど。

「///ありがと。
気分を、変えて、みました」

「うん。………そんな感じ」

昨日の放課後とは、打ってかわって様子の違う私を見て、二宮くんがクスクス笑った。

だいぶ、強引だったけれど、お姉ちゃんのおかげで、私の落ち込みは、たった1日で終わった。

心にひっかかるものは、まだ、いっぱいあるけれど、今、自分にできることを一つ一つこなしていくしかないって前向きに思える私は、たぶん、充分にエネルギーが補充されているはず。

二宮くんが、もし元気になってくれるなら、うちのお姉ちゃんと会わせたいな、と思った。
………でも、二宮くんは人をやり込めるのがウマイから。
強気で強引なお姉ちゃんでも、取りつく島がないかもしれない。
二宮くんに空回りさせられるお姉ちゃんを想像すると、少し笑える。

「………楽しそうな妄想中、大変申し訳ないんだけど。
もう1回、訊いていいかな？
コレ、何？」

私がどんな顔して妄想していたかは分からないけど、とりあえず、二宮くんの言葉で、顔は、赤面する。

「あ、ごめんなさい。
サトシさんに、渡してもらえる？」

二宮くんの目が揺れる。

「サトシ、に？」

「うん。
………昨日、本屋で、見つけた雑誌なの」

「雑誌？」

「あ、あと、今朝、通学途中で買ったパン」

「………パン………？
あー、ありがと。
でも、良かったら、自分で渡してやってよ。
その方が喜ぶわ。
………ほら、オジサン、外出てないし。会えるの、喜ぶと思う」

二宮くんがそう言って笑った。
うまく笑い返せなくて、私は口元を少しあげるだけ。