秋桜（by.ROOMS）6 (ページ15)

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「ミイラ取りが、ミイラってとこかな。あ、なんか、意味違うか。
………ふはは、相葉サンみてぇ」

渇いた笑い声のあと、ズズッと、鼻を啜る音がして、胸を締め付けられる思いがする。

………離れて座っていて、良かった。
同じ方向を見ていて、良かった。
臆病になっている私は、そんなことを思う。

………だって、今、二宮くんに掛けるべき言葉一つ、見つからない。

「………俺が間違ってるって、分かってるよ？高橋さんのが正論。知ってる。皆が俺に言いたいことも、分かってる。俺自身、思うもん。何で………って」

すうっと息を吸う音が聞こえて、止まる。

「でもっ………！」

理屈じゃないんだよっ、
小さく小さく、囁くように吐き出された二宮くんの言葉に、アタマが殴られる思いがする。

ーーーカキーンッ

野球の金属バットがボールを打ち上げる音が聴こえて、静寂が打ち破られる。
ため息になりそうだから、控えめにしていた呼吸を再開し、三角座りしていた足を戻す。

頭がぐわん、ぐわんと揺れるように重く、この痛みをどうやって逃がしたらいいんだろう、と思った。

「………何で、サトシは外が怖くないんだろ。下手したら………死ん………じゃうかもしれないのに」

まるで、放心状態のうわ言のように。無防備に心を投げ出して、剥き出しの言葉を晒す二宮くん。
その口から出た「死」というワードに、ゾクリ、と背面から寒気が襲ってきた。

「あのオジサン、肝心なことなんも、言わないから。受け入れ体制も、あそこまで貫かれたら、本当、難儀なもんだわ」

いつものような話し方。
ちょっと他人事みたいな言い回し。
それでも、感じてしまう翳り。
消化されることない、二宮くんの不安はどう抱えていけばいいんだろう。

カタン、椅子から立ち上がった二宮くんが、こっちを見て、泣きそうなくらい目尻を下げて微笑った。

「………ごめんね？そんな顔させちゃって」

ふふふ、と自嘲じみた笑いをして、困った、みたいな顔。
小さく頭を振って、それを否定する。
謝りたいのは、私の方。
こんな悲しい話しを、させてごめんなさい。