秋桜（by.ROOMS）6 (ページ14)

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30.3 ページ14

「………本当、に？」

「本当に。」

断定を協調するように、キッパリと二宮くんが言う。

「こういう、当たり前の、空も。
知らなかったわけですよ、サトシは」

二宮くんの言葉を受けて、眼を空へと向ける。
青く、高く、広がる空が、眩しくて目に痛い。

二宮くんの言っている言葉の意味はわかるのに、理解ができなくて、ただ、二宮くんの話しをアタマん中で追うだけだった。

その話しが、語られるたびに胸にくる衝撃がキツくて。
やり場のない苦しい気持ちをどうにかしたくて、
両腕で足を抱え、椅子の上でギュウッと、三角座りをする。

「その前は、山ん中で相葉さん一家と暮らしていたらしーけど。
そこ、も、空気があんまり綺麗じゃなくなって、今んとこに………
俺と親父が連れてきたの」

淡々と話し出す二宮くん。
抑揚もなく、語られるソレは、用意してきたはずの私の言葉よりずっと、構成が出来て、重みがある。

「11年もあんなとこいるなんて、ありえないでしょ？
だから、俺と翔さんと潤くんで、サトシをあそこから出してやろうって画策したの。
それがたった、3か月程前」

「………え？」

「だから、サトシは、外出歴3か月ってとこかな」

二宮くんの説明が腑に落ちなくて、頭に疑問が浮かぶ。
………外に住めないから、あの中で暮らしていたサトシさんを、二宮くんたちが出してやろうとした？

「あー、この説明じゃ、違う、な。
………最初、あそこにサトシがいる理由がわかんなかったんだ。
俺たちは、サトシは閉じ込められているんだって勘違いしていたの。
んで、サトシを解放してあげたいと思ったんだけど、
蓋を開けてみたら、サトシは生きるためにあそこにいたってわかったという
………笑えないオチで」

抱えた膝に、額をのせて、目を閉じる。
私の中に、今、渦巻くモヤモヤしたウネウネした、暗い感情。
悲しいとも、切ないとも、少し種類が違う。
胸の中を巣食うように広がるマイナスな感情の塊。

「サトシをあそこから解放したいのに、サトシを閉じ込めておきたいのは俺なんだ………」

二宮くんの告白に、胸の苦しみが止まらなくなって、手の平で、口を抑えて塞ぐ。
ちゃんと心を落ち着かせたくて、眼を閉じて、ゆっくりと肩で息をする。